二次創作。はじめての方はat first はじめに をご一読ください。
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前々から、孟徳さんちのご子息さんたちを花ちゃんに絡めたくて仕方がなかったのですが、最終兵器のマダオさんを打ち破る秘策が出なくてですね。師匠の知恵も借りたいです。こういう時には絶対かしてくれないと思うけど。
とりあえず、ご子息さんたちサンドはできた!
というわけで、ゲーム本編には登場しない方々がてんこもりです。
羽扇エンドといいながら、糸目さんも細目さんも生き残ってます。 譲れない。なので、タイトルに「幻」付けました。
そういうのがお嫌いな方は見ないでくださいね。
とりあえず、ご子息さんたちサンドはできた!
というわけで、ゲーム本編には登場しない方々がてんこもりです。
羽扇エンドといいながら、糸目さんも細目さんも生き残ってます。 譲れない。なので、タイトルに「幻」付けました。
そういうのがお嫌いな方は見ないでくださいね。
近道をしようと思っただけなのだ。花は地面についた手をぎゅっと握った。
宮廷は似たような柱、似たような瓦屋根が並んで見えて、ここがどこか、うっかりすると分からなくなる。そうしていま花は、うっかりしてしまった。
護衛の兵士たちはその職務ゆえか、花の目の届くところには見当たらない。きちんと姿勢を正して回廊を行く色っぽい女官たちもいない。
方向だけは分かっているのだ。あのひときわ高い屋根の下に、玄徳がいる。
早く戻らなくては、心配させてしまう。彼女の師匠も恐ろしい笑顔で出迎えるに違いない。
そう思うと居ても立ってもいられなくなり、回廊の欄干をまたぎ超えた。ところが、低い植え込みと見えたそこは、意外に高い木々が並んでいて、花は勢い余って地面に転がってしまった。
幸い、高さはそれほどなかったのと、木々が衝撃を和らげてくれたせいで、せいぜいひっかき傷を顔につくったくらいだろう。しかし木々を抜けた途端、目の前に突きつけられた白刃に、動けない。
小さな中庭である。
花が転がり落ちたような高さの木々が四方に植えられ、地面から回廊を歩く人々は見えない。そこに落ちた途端、鋭い誰何の声とともに切っ先が向けられた。
青年がふたり。貴族なのか、非常にいい身なりをしている。
生真面目そうな顔をした、簡単な鎧を身につけた武官らしい精悍な青年と、濃い茶の地味な色合いだが日差しにきらきら光る衣をゆったりと着た、文官らしい出で立ちの青年。どちらも花の基準から言えばかなり格好いいし、この世界の基準から言ってもとびきりだろう。だが、そんなことをのんびり考えているゆとりを武官のほうは与えてくれなかった。白刃は日差しにまばゆいほどきらめいている。
「何者だ」
低い声で唸るように尋ねられ、花の喉が鳴った。
「す、すみません。道に迷って」
「そのようなことは聞いていない」
「お待ち下さい、兄上」
白く光る切っ先をすいと下げたのは、団扇だった。
花の知る、紙を貼った団扇ではなく、長い葉の植物を編んで作ったものだ。ただよく見るとそれは植物ではなく、緑色の絹らしい。植物らしく作ってあるが、たいそう値が張るものだ。
「子建」
不審そうに振り返った武官に笑いかけ、文官らしい彼は花を見た。
「この方は、かの伏龍のお弟子様でしょう。」
にこやかに微笑まれ、花はせわしなく頷いた。
「そ、そうです!」
剣がゆらりと揺れた。
「そういえば見慣れぬ衣を着ている。」
生真面目そうなほうにしげしげと眺められ、花はもじもじと俯いた。
「兄上、女性をそのように見つめるものではありませんよ。」
「うん? ああ、そうか。済まない」
「い、いえ」
花が首を横に振ると、骨張った手が差し出された。彼の顔と手を見比べていると、まどろっこしそうに腕を引かれる。
「きゃ!」
「女子がいつまでも草むらに座っているものではない」
「すみません…」
「それで、伏龍のお弟子様がこのような場所で何をなさっているのです」
優男のほうが微笑む。
「あの、さっきから言ってますけど、本当に道に迷っちゃったんです。」
生真面目なほうが目を丸くした。優男がくすくす笑う。
「なるほど、龍は地を歩くものではありませんからね」
「子建。茶化している場合か。」
「そうですね。そのような方ならば、疾くお送りしなければなりません。」
そうだな、と無表情に頷き裾を翻し歩き出す武官に、優男のほうは花の手を取った。
「蜀の皆様がお待ちの場所までお送りしましょう。」
「あ、あの、わたしは山田花と言います。お名前は」
花が問いかけると、がさりとうしろの茂みが揺れた。突然抱きつかれ、花は今度こそ悲鳴を上げた。弾みで、取られていた手が離れる。
「きゃああっ」
「悲鳴まで可愛いねー。探してたんだよー花ちゃん」
「も、孟徳さんっ!?」
「父上」
「おや」
孟徳は紫の衣に花を深く抱き込むようにして、若いふたりをねめつけた。
「お前ら、俺に内緒で花ちゃんをたぶらかすなんて五十年早いぞ」
生真面目なほうは何も言わずにそっぽを向いた。優男のほうが団扇を口元に当てた。
「父上、この方は道に迷われたのですよ。」
「えーそうなの? 俺を捕まえてくれたらよかったのに」
師匠や玄徳に、孟徳さんに近づくなときつく言われていますとは言えずに、花は曖昧に俯いた。孟徳が満面の笑みで花をのぞき込む。
「ねえねえ、やっと会えたんだし一緒にお茶でもしようよ。ね、いいでしょ」
「師匠や玄徳さんを待たせていますから!」
「あいつらには使いを出せばいいよね。」
「いえ、あの、もう国に帰るので」
「決まり~」
優男のほうがすいと進み出ておろおろと宙をさまよう花の手を取った。花は固まった。
「可愛らしい方だ。この手が今の太平の世を招いたのですね」
柔らかな口調とは裏腹に厳しい、まっすぐにのぞき込まれるような目に花は息を呑んだ。その声に、武官らしい彼も顔を寄せてくる。
「こうして見ると、少々幼いばかりの娘ではないか。本当に令君をひっぱたいたのか?」
「あ、あれはですね、もうこれ以上人が死ぬなんてイヤで、それで説得をですね」
慌てて言い訳をする花に、武人はからからと笑った。
「あいつめ、まだ衝撃が抜けきらないらしいぞ。」
「ええっ!?」
「だからお前らは女子を見る目がないんだよ。花ちゃんは特別なんだ」
子どもっぽい誇らしげな孟徳の口ぶりに、青年ふたりは、揃って嘆息した。
「さりげなく母上たちを褒めたのでしょうか、いまのは」
「いや、ただの口癖だろう」
「ねえ花ちゃん、こんなやつら置いといて行こうよー」
「孟徳さん、みなさんをご存じなら紹介してください」
花がやっと孟徳をきちんと見返すと、えー、と孟徳はふくれっ面になった。
「やだ」
「だってわたし、このひとたちに助けてもらうところだったんです。ちゃんと名前を呼んでお礼が言いたいです」
孟徳は唇を尖らせたが、すぐに諦めたように小さく頭を振った。
「剣を持ってるのが曹子桓。団扇を持ってるのが曹子建。」
「曹、って…」
「俺の息子ども。」
花は目を丸くして青年と孟徳を交互に見た。
「孟徳さんって、こんな大きな息子さんが…」
孟徳はきり、と己の息子を見据えた。
「お前らがこんなところをうろついてるから、花ちゃんが要らない衝撃を受けただろうが!」
「こんなところ、とは不敬な仰りよう」
「本当ですね。帝のご機嫌伺いに頻繁に伺候するよう、ずいぶんせっついたのは父上だったと記憶しておりますが」
花は少し歩いてふたりの前に立った。深く頭を下げる。
「子桓さん、子建さん、ありがとうございます。」
花の様子に、ふたりは僅かに目を見開いた。子桓のほうが先に、可笑しそうに笑った。
「礼を言うのは早いだろう」
子建も、口元を団扇で覆って目元を緩ませた。
「そうですよ。礼は、無事に玄徳殿とお師匠様にあなたをお送りしてからです」
「そうだな。行くぞ、子建」
「はい、兄上」
「お前ら! 父親をさしおいて!」
「可愛い女の望むことをするのが父上の何よりのお望みでございましょうに」
くすりと笑った子建の笑顔は、いやに清々しい。花の右手を剣を握り慣れた手が、左手に滑らかな指が絡められた。
「花ちゃんの手まで握ったなお前ら…」
地を這うような孟徳の声に、子桓が楽しげに笑った。
「子建、女子のことで父上を出し抜くのは初めてだな」
「なかなか愉快なものです」
「しかし、本当に小さな手だな。」
「あ、あの、すみません」
「申し訳ございません、兄上は女性の扱いにいささか難がありましてね…兄上、こういう時はお可愛らしい手だと言うのがよろしいかと」
「おお、そうか」
両側から違う男性に手を握られて、顔から火が出そうだ。
呑気に話す三人の前に、孟徳がせわしなく回りこむ。大げさに肩をすくめる。
「しょうがない、先導してあげるよ花ちゃん」
「ありがとうございます」
花が笑うと、孟徳はさっきまでの不機嫌を忘れたように嬉しそうな顔をした。
(2010.9.12)
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