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二次創作。はじめての方はat first はじめに をご一読ください。
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 公瑾さんと花ちゃん、新年の風景であります。
 
 
 

 
 
 
 公瑾は寝台に横になって、とりどりの布片を見ていた。繊細な手で刺繍された鳥や花は、季節に合わせた帯に仕立てようと公瑾が発注したもので、灯火に花びらや鳥の羽が動くと見えるほど出来のいいものだ。あえて田舎ふうに編んだものなどは、きちんと色目を合わせた衣装を「外す」のに良い。なかには、妻が図案を描いた「花火」なるものもあり、暗色の生地に柳のように落ちるきらきらとした線が目新しかった。
 彼はゆるく欠伸をして目を上げた。視線の先では、花が真剣な顔をして机に向かっている。白い頬に灯火が暖かな色を映している。
 「まだ終わらないのですか?」
 花は公瑾を見ずに、こっくりと頷いた。
 「大事なことですから」
 「…新年の挨拶で疲れて帰って来た夫を放っておくほど、ですか」
 「わたしだって一緒に回りました。」
 決然とした声音に、そうですがねと公瑾は口の中でだけ呟き、片膝を付いて躰を起こした。妻は相変わらずこちらを見もしない。
 「書き初めは大事なんです。その年の心がけを書くんですもん」
 「不思議な風習ですね」
 花は目の前に、小さな簡をかざした。削り立ての木目も鮮やかな、よい香りのする簡はふだん使いのものと違う。
 「それで、何を決めかねているのです」
 「書きたいことがいっぱいあるんです。」
 「ほう」
 「家内安全は、外せない気がするんですよね。厄年って考えはないから厄難消除はないし…やっぱりここは大きく取って諸難消除かなっ!」
 「さっぱり分かりませんが、あなたにとってはそれらはめでたい言葉なのですか」
 花は公瑾を見て小首を傾げた。
 「めでたい、というか…縁起がいい言葉ですね。」
 「それは心がけとは微妙に違う気がしますが…あなたが目指すべきことを書くのではないのですか?」
 ああ、と花は目を丸くして口元を押さえた。
 「そうだ、お札じゃないんでした。」
 公瑾は躰を倒し目を閉じた。
 「わたしが寝入る前にお願いしますよ」
 「大丈夫です、それだったらすぐできます!」
 勢い込んだ声を上げた花は、筆を滑らしたようだった。かちゃかちゃと文具を片付けている音だろう、それが途切れるとぶつかるように公瑾の隣に入ってくる。公瑾は僅かに顔をしかめて花を見た。
 「いつまでも子どものように」
 「公瑾さんあったかいから好きです~」
 うふふ、と笑った花は公瑾に抱きついた。その腰を引き寄せ、花の顎を指でつまむと、笑んだままの花の視線とぶつかる。
 「それで、なんと書いたのです」
 花の笑みが深くなった。
 「内緒です」
 「…ほう」
 「わたしの字だから、公瑾さんは読めませんよ?」
 「それは念入りなことですね。わたしに読まれては恥ずかしいことですか。」
 花は軽く首を振った。
 「そういうことじゃないです。だってこれは、わたしひとりの目指すことですから、わたしが分かっていればいいんです。」
 「そうですか」
 「公瑾さんも書いたらどうですか?」
 「そうですねえ…あなたが怪我をしないように、喬姉妹並びに伯言や興覇などの甘言に乗ってうかうかと共に出かけないようにきちんと注意すること、と書きましょうか。」
 「公瑾さん!」
 花が唇を尖らせて睨んでくる。それを深く抱き込んだ。…既にこの胸に刻まれていることを、書いても詮無い。
 (あなたとともに)
 妻の髪は心地よく指をすり抜けていく。彼は深々と髪の香りを吸い込んだ。
 
 
 

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