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二次創作。はじめての方はat first はじめに をご一読ください。
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 今回は、大きい公瑾さんと花ちゃんです。いわゆるぴろぅとーくであります。苦手な方は回れ右をお願いします。
 
 ちびっこ都督は、また後日。
 
 
 


 
 
 
 公瑾が衣を整えて寝台に戻ると、うつぶせになっていた花がゆるりと首をもたげて彼に寄り添った。その髪を撫で、公瑾は微笑した。
 「花」
 「ん…」
 甘いような鼻声で応答すると、花は彼の首に鼻を寄せた。
 「もう、着替えてる…」
 「あなたも衣を着なさい。それとも着せてほしいですか?」
 微笑んでいうと、彼女は笑ったようだった。
 「ふく、着るの、もったいないです」
 「面白いことを言いますね。」
 「だって、もう離れちゃうの、さびしいです」
 情熱の名残を、実に甘えた口調で言われて公瑾の体の奥がざわりとした。
 「…そうですか、寂しいですか」
 「こうきんさんの匂い、だいすき、なので…こうしてるともっと移るかなあ」
 子犬のように頬ずりされ、彼はため息をついた。
 「甘えたですねえ、あなたは」
 本当は自分ばかり甘えている気がする。彼女はどこまでも許してしまうから、今夜だってこれを限りの逢瀬であるかのようにその肌をむさぼった。
 確かに近頃、彼女の肌が変わってきた。公瑾の指を、手を覚えて、寄り添えばやわらかい匂いを放つようになった。これを色香というのかと眩暈を感じる。いわゆる職業的に色を売る女と遊んだこともあるし、女として侍女たちを見ていたとは思うのだが、まるで別ものだ。すべてが彼のためにあつらえられた特別製ではないかと錯覚してしまう。
 いつまでも頬ずりをやめない彼女がくすぐったくて、公瑾はわざと手荒に、寝台の端にのけられた彼女の衣をその体に巻きつけた。あやされたように思うのか、花がうふふ、と笑う。
 「しゃんとなさい」
 「えー、無理ですう」
 花は半目で彼を上目使いに見た。すっかり蕩けきったさまが、先程まで腕の中で翻弄されていたとは思えない奔放さを醸し出している。
 「どうしてすぐにしゃきっとできるんですか…? なんかずるい」
 「ずるい、と言われましても」
 「あ」
 花はふわとむくれた。
 「わかった、こうきんさん手加減してるんでしょう」
 「は?」
 彼は珍しく目を見開いた。妻は眼を閉じ、寝言のように繰り返した。
 「ず、るい…」
 そのまま彼女は寝息を立て始めた。彼は吐息を押し殺し、花の帯を直してともに掛け布をかけた。
 (ずるいのは、あなたのほうだ)
 ゆっくりと冷えていく彼女の肌を、薄れていく甘い香りを惜しんで離れがたいのに。まるでそれがあなたのこころが離れていくようで忌わしくさえあるのに。
 あなたは、わたしがあなたの香りを作るのを大仰だと言い、また無邪気に喜ぶけれど。
 (わたし以外、髪の毛ひとすじも入らせてなるものか)
 例えば、海に近づけば潮の香りがするように、川面に船が起こすさざ波が広がっていくように、あなたはわたしのかけがえのないかたわれだと誰もが知るがいい。むろんそれは、危険も孕んでいる。都督の妻となれば、危害を加えられる確率は格段に高くなる。ただそれでも、あの儀式のような香合わせは止めない。わたしの名が、わたしの想いだけがあなたを守る。
 「花」
 囁いても健やかな寝息を返すだけの妻に苦笑を零し、公瑾は目を閉じた。
 
 
 
(2011.2.2)

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