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懲りずに コネタ。すみませんそろそろみなさん飽きましたでしょうか(汗)
彼を書いたのは初めてやもしれません。
子龍がつくづくとこちらを見るので、花は表情に困った。
ご飯にしますかお風呂にしますかそれともわ・た・し? と、鏡の前で何日も練習した。「あちら」で友人が浮き浮きと語っていた、「結婚したらやってみたいことリスト」のひとつだ。「一緒に朝寝坊」「一緒にお昼寝」は子龍の生活習慣上、早々に諦めた。だから、せめてこれくらいはしてみたい。
そう決めて、早、五日。
城下に夜盗。
呉の国境から早馬。
孔明の無理難題(彼に言わせれば愛の鞭)による執務のちょっとした停滞。
誰が花の決意を知って邪魔しているのかと思うほど、互いに用事が立て込んだ。
そして今日、帰ってきた新婚三ヶ月の夫にいよいよ告げてみれば、子龍は衣を脱ぐ動作を止めて妻をじっと観察した。
「具合が悪いのか?」
聞くと同時に、大きな手のひらが花の額に当てられる。花は目を丸くした。
「どうして?」
「熱はないですね」
夫はまだ、丁寧な言葉が混じることがある。同時に口を開いたことに、子龍は驚いたように目を見開いた。
「いや、いつもならば風呂に入り衣服を改めて夕食、となるのに、わざわざそのように聞くということは、具合が悪いのではないかと思った。」
とつとつと言う夫は、まだ首を傾げている。花はいたたまれなくなった。
「あ、あの、さっきのはお約束なの!」
「…何か約束していただろうか?」
「お約束、っていうのは、こういう場面ではこういうことを言うんですよ、っていう言葉のことなの。」
子龍は僅かに顔をしかめた。痛みを堪えているようにも見え、花は早口に続けた。花の世界の「常識」と子龍のそれが食い違う時、彼はいつもこんな顔をする。
「あのね、そこで、新婚さんの言葉って言われてたから、ちょっと子龍くんに言ってみたかったっていうか」
子龍の手のひらが花の頬を包むように触れて、彼女は口を噤んだ。
「では、良い言葉なのですね」
「良い…っていうか、浮かれた言葉、なの…」
ますます俯く花の顔を、子龍の手が柔らかく上に向けさせた。おそるおそる視線を合わせた夫は、目尻を紅くしてはいたがとても楽しげ、というか嬉しそうだった。
「しりゅう、くん?」
「浮かれている、と、わたしは玄徳様によく言われます。」
子龍の手が伸び、花を抱きしめる。花は目を閉じた。
「わたしも師匠に言われるよ?」
「なんとなく後ろめたかった」
「そうかも」
抱きしめられる力が嬉しい。
「でも、同じだ」
「うん。…夫婦、だし?」
この時ばかりは顔を合わせていなくて良かったと、花は子龍を抱きしめ返した。
(2011.8.9)
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