二次創作。はじめての方はat first はじめに をご一読ください。
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昨日のリクエスト募集に、さっそく応じてくださった方、ありがとうございます。
リクエスト締め切り後に改めて取り組みたいと思います。もうしばらくお待ちください。
では、紅い人とかわいこちゃんです。end後からあまり時間たっていないカンジでしょうか。
リクエスト締め切り後に改めて取り組みたいと思います。もうしばらくお待ちください。
では、紅い人とかわいこちゃんです。end後からあまり時間たっていないカンジでしょうか。
花は首をかしげて孟徳の背を見つめた。
いまは休憩時間だ。というより、休憩時間と称して彼が強引に文若のもとから花を連れ出しただけなのだが、文若も四の五の言うと疲労が倍になるのだろう、諦め顔で送り出してくれた。申しわけないと思いつつ、孟徳の側にいられるのは正直に嬉しい。
孟徳が、回廊から庭を見やってため息をついた。
「今日は寒いね。あの東屋だと花ちゃんに風邪を引かせちゃうかなあ」
枝の長い木がゆっくり揺れている。それを見ながら、花は小首をかしげた。
「わたし、そんなに弱くないですけど…孟徳さんが風邪を引いちゃったら文若さんたちに怒られますから、止しましょうか」
笑顔で彼の袖を引くと、彼は急に花を腕の中に抱き込んだ。
「そうしたら花ちゃんに看病してもらうだけだからいいの。」
「良くないです!」
叫んで身動きしてみるが、どう固定されているのか、さして力を込めているようにも見えない腕が外れない。そろっと彼を見上げると、満足そうな笑みを浮かべている。この顔に、花は弱い。
「孟徳さん」
「なぁに?」
「わたし、孟徳さんが風邪ひいたらもちろん一生懸命看病しますけれど、孟徳さんが苦しいのは嫌だから…風邪とか、ひかないでくれると嬉しいんですけれど」
上目遣いに見つめてみると、孟徳はさらにでれっと笑った。
「うん、そうする」
もう、安請け合いなんだから、と花は唇を少し尖らせた。そこに軽く口づけされ、俯いてしまう。そうすると先ほど気づいた違和感が強くなる。花はおずおず言った。
「あのう…孟徳さんから、今までと違う香りがするんですけど…気のせいですか?」
すぐに彼は了解したように笑みを大きくした。
「うん、変えたよ。寒くなるから、今までのものだと温かくない気がしてね。気づいてくれて嬉しいな。」
これだけ密着すれば気づくと思う、と花はちらと感じたが、黙って彼の顔を見上げた。彼は子どものように不安そうな表情で花を見下ろしている。
「きらい?」
「いえ、ちょっとびっくりしただけです。初めて会った時からあの香りと一緒にいたから、なんだか孟徳さんが違うひとみたいに思っただけなので。今度の香りも素敵だと思います」
「ありがとう。」
笑顔がとても明るくて、花はどぎまぎして目をそらした。
中庭の花はそういえば少なくなっている。頬を撫でる風も乾いているようだ。
「…そうか、寒くなるんですね。」
孟徳も花のように空を見上げた。
「うん、ここは結構寒くなるよ。花ちゃんの衣も温かいものにしないとね。」
「そういえば今日、侍女さんに上にもう一枚羽織りますか、って聞かれました。」
「ああ、新しい上衣、見てくれた?」
「はい…あの、とてもきれいでした。」
うす青に控えめな白糸の吉祥刺繍が可愛らしいその衣を思い出し、花は微笑んだ。抱きしめた肌触りも、今まで知らないほど心地よかった衣。
「ありがとうございます」
「花ちゃんは着せがいがあるから、俺としてはもっと着飾ってほしいんだけどなー。このあいだの紅い衣みたいにしまわれちゃうとね。」
「あれは…ごめんなさい。」
花は慌てて言った。
孟徳の衣ように鮮やかな紅い衣装を贈られた時、ちんまりした自分の姿にあまりに似合わなくて情けなくなった思い出がある。夜に何度も取り出しては眺め、ため息をついてしまうのが常だった。
そうして、新野で孟徳を初めて見た時のことを久しぶりに思い出した。赤い赤い炎に照らされた表情の鋭さに息をのんだことを。
今は、あれほど恐ろしい表情を自分に見せることはない。花は朝議に出る訳ではないし、孟徳もそういう場面に彼女が出くわさないように慎重になっているのだろう。彼女の中で、紅は恐ろしい色ではなくなった。ただ、愛しい色だ。だからこそ着るふんぎりがつかない。
「やっぱり、孟徳さんみたいに格好良くないとあんなきれいな紅は着られないです」
うーん、と彼は人差し指をたてて考えるそぶりをした。
「そうだね、あの色が似合っちゃったら、俺の恋敵が増えちゃうかも」
「こ、恋敵って、そんなものいません!」
「うふふ、ありがとう」
くす、と笑った彼は、ふいにひどく真剣な顔をした。
「孟徳さん?」
「君の服に新しい香りを焚きしめるのを忘れてたな。とりあえず急いで匂い袋を贈るから、身につけてくれる?」
「いいですけど…」
「あ、それよりも」
柔らかい唇の感触が、額に当たった。そのまま、ゆっくり唇が動く。
「このまま香りが移るまで、抱きしめていようか。」
花の全身が熱くなる。彼女はぎゅっと目を閉じた。
「―――はい」
ややあって、額から唇が離れた。花の肩に彼が顔を埋める。細かい振動が笑っているものだと知って、花はますます赤くなった。
「も、孟徳さん!」
笑いながら彼は、花が小さい頃、ぬいぐるみにしていたように頬ずりした。ただそこに、まだ彼女の知らない情熱を込めて。
「大好き、花ちゃん」
ひらり、と紅い袖が大きく返る。まるで手を引かれるように。
「お茶にしようね」
言いながら振り向いた流し目が剣呑なまでに色っぽくて、花はやっとのことで頷いた。
(2010.5.11)
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