二次創作。はじめての方はat first はじめに をご一読ください。
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☆ご注意ください☆
この「幻灯」カテゴリは、chickpea(恋戦記サーチさまより検索ください)のcicer様が書かれた、『花公瑾』という設定をお借りして書かせていただいているtextです。
掲載に許可をくださったcicer様、ありがとうございました。
『花公瑾』は、最初に落ちた場所が公瑾さんのところ・本は焼失・まったく同じループはない、という超々雑駁設計。
雑駁設定なのは のえる の所為です。
何をよんでもだいじょぶ! という方のみ、続きからどうぞ。
幻灯15の続きっぽいです。
この「幻灯」カテゴリは、chickpea(恋戦記サーチさまより検索ください)のcicer様が書かれた、『花公瑾』という設定をお借りして書かせていただいているtextです。
掲載に許可をくださったcicer様、ありがとうございました。
『花公瑾』は、最初に落ちた場所が公瑾さんのところ・本は焼失・まったく同じループはない、という超々雑駁設計。
雑駁設定なのは のえる の所為です。
何をよんでもだいじょぶ! という方のみ、続きからどうぞ。
幻灯15の続きっぽいです。
仲謀は開け放した扉を見て顔をしかめた。
「…ったく、女が入り口を開け放してんじゃねえよ」
呟いてみるが、昼下がりの回廊には彼方の曲がり角に兵が立っているだけだ。彼の声は暖かな風に吹かれ解ける。仲謀は首をひとつ振り、部屋の中をのぞき込んだ。
螺鈿をあしらった黒塗りの卓に突っ伏して眠っている娘の寝顔はあどけない。およそ若い娘らしくない、艶のない歪んだ真珠が連ねられた髪飾りが傾いて落ちそうになっている。仲謀はくすりと笑った。
彼女は仲謀の兄であり呉の太守である伯符と幼なじみで、仲謀とも古くから親しい。しかし、訳無く懐いているかと問われれば仲謀は顔をしかめる。答えを間違えるとすぐ物思わしげなため息をつかれるし、酷い間違いをやらかすと伯符に似ているのは顔だけですかしらと微笑まれたりする。年齢はさほど違わないはずなのにと、時には顔も見たくないほどしゃくに障るのだが、必ずまた質問しに行ってしまうのだ。
彼女の寝息は、軒先で鳥が鳴いても乱れない。それをいいことに、彼は壁際から彼女を見つめ続けた。
兄が彼女を想っていることは昔から知っている。そうして、あんな熱っぽい目で見られて靡かない女がいると驚いていた。弟の目からしても兄は大きく強く、惹きつけられる。城下に下りれば妓女たちは笑顔で歓迎し、馬で道を行けば娘たちは目引き袖引きして目元を潤ませる存在なのに、公瑾の目にはそこだけ見えていないようだ。
その時、彼女の瞼が大きく震えた。鳶色の目が開く。彼女は子どもっぽく目をこすりながら起き上がり、大きく伸びをした。そこでやっと仲謀に気づいたようで、目を丸くした。
「そこでなにをしていらっしゃるのですか、仲謀さま」
「公瑾の間抜けな寝顔を見てた。」
娘は、にっこりと微笑んだ。
「まあ、無礼ですこと。」
「…お前な…」
「恋しい娘がおできになりましたらお気を付けなさいませ。許しも得ぬのに寝顔を見るなど、娘から愛想を尽かされても文句は言えませんよ?」
仲謀は何か反論しようとして口を開けたが、ひとつ息をつけて肩を落とした。
「気をつける」
娘は重々しく頷いた。白い指を伸ばして髪飾りを直す。
「賢明ですね。――何かご用でしたか」
仲謀がどう言おうか迷った時、娘が瞬きして立ち上がった。振り返れば、伯符が怪訝そうに仲謀を見ていた。
「仲謀? なにしてんだここで?」
「通りがかりだ」
伯符は素っ気なく頷くと大股で部屋に入ってきた。公瑾の傍らに立つ。
「朝に渡した、船の件だが」
娘は小さく頷くと、迷い無く壁際の棚から簡をひとつ取り出した。伯符に差し出し顔を寄せる。仲謀は目を眇めた。
近頃、兄が彼女と海に出かけたことがあった。それ以後、ふたりの距離が以前より近いように感じるのだ。
公瑾が、跳ね返すように伯符を見ていない。
伯符が、抱くような目で公瑾の後ろ姿を見る。
そう思いながら壁際に佇んでいた仲謀を、伯符がちらりと見た。自然な動作で考え込み俯いている公瑾の腰を抱き、唇の端をかすかに上げる。仲謀は思わず兄を見返した。
「伯符」
公瑾が驚いたように小さく声を上げたその時にはもう、伯符の手は彼女を離れていた。公瑾はきりりと目をつり上げた。
「わたくしはいま、船についてお話をしていると思いましたが」
「そうだな」
「そうだな、ではありません。」
咎めるように言う彼女がちらと仲謀を見たその流し目に、彼はぞくりとした。彼はきつく唇を噛み、兄に頭を下げると踵を返した。
(あんな目をしたろうか)
いつも静かで皮肉げで、いくさや船のことばかり言う女。
しかしあの目は伯符の戯れに応えた、ひどく艶な眼差しに思えた。仲謀など忘れていたかのように驚いて――
彼の足音は荒く強く、いつまでも回廊に響いていた。
(2011.2.24)
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