忍者ブログ
二次創作。はじめての方はat first はじめに をご一読ください。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

☆ご注意ください☆
 この「幻灯」カテゴリは、chickpea(恋戦記サーチさまより検索ください)のcicer様が書かれた、『花孟徳』という設定をお借りして書かせていただいているtextです。
 掲載に許可をくださったcicer様、ありがとうございました。
      
 『花孟徳』は、最初に落ちた場所が孟徳さんのところ・本は焼失・まったく同じループはない、という超々雑駁設計。 雑駁設定なのは のえる の所為です。
       
 何をよんでもだいじょぶ! という方のみ、続きからどうぞ。
 (流れは、幻灯 8→11→13→16→21→23→24→25→26→28→29→30となります。)

 


 かたちばかりの笑みにふさわしい派手な動作で紅と青が交差する。
 ぎん、と大きな音がして、二人は左右に離れた。
 「どうぞ、降参なさってください。息をするのも辛いでしょう」
 公瑾が剣を持ち替えながら唇をつり上げた。孟徳は頬に滲んだ血を拭い、人差し指を振って見せた。
 「それでも美周郎? あなたはわたしを口説いているのでしょう? じゃあ最後まで付き合わせなさい。」
 彼は大人びた子どものように苦笑した。
 「困った方だ」
 「あなたほどではない」
 ふん、と顔を背けた公瑾の髪は一部切れ、裾もかぎ裂きができている。
 …あんなふうに、見えたら。わたしの心が見えてしまったら、「あのひと」のように笑って立っていられなくなる。きっと次の輪でも誰彼かまわず――
 (道連れにしたくなる)
 孟徳は剣を持ち直した。
 こんなことではいけない。
 文若に抱かれている時も、公瑾と会話している時もそう思った。わたしは満足してはならない。常に乾いていなければならない。もし満足したら、帰ってしまう。でも、そうしたらあのひとに返せるのだろうか。 でも、それではあのひとに申し訳ない。会えなければ、謝ることができない。
 この「輪」を回す者が変わった理不尽をわたしは許してはならない。新しい「彼ら」に委ねてはならない。
 もう細切れになっていって良いのに。自分なんか亡くなっていいのに。洗い張りのできない自分が苦しくて苦しくて…
 彼女は、うっすら笑った。自分、自分、自分。孟徳という名はどこまでも霞んで、自分は彼になれない。
 ふっ、と公瑾が剣を下ろした。孟徳は眉をひそめた。
 「どうした」
 「不愉快です」
 「何?」
 「あなたはちっともわたしに相対してはくださらない。何のためにわたしがこれを向けたと思っているのですか」
 公瑾は剣で地を軽く突いた。
 「口説くためでしょう?」
 孟徳は笑った。
 「ああ、それとも、あなたは美周郎なのだし、己に気がない女子など初めてかな?」
 公瑾は本気でむっとしたようだった。
 「わたしは、影より他に追うひとがいない。それでもあなたの側に寄りたい」
 「なぜ」
 「炎は影を作る」
 「だったら、無駄だなあ」
 孟徳は剣を持ち替えた。
 「やっぱり、どちらかが死なないといけないね」
 公瑾は面倒そうに息をついた。そして、構えた。
 おそらく、これで最後だ。剣を握っているのがやっとだから。でも、この楽しさはなんだろう。あなたが呉れる死は、文若が呉れる死とどう違うのか、やっとはっきりする。
 足が地を蹴ろうとして。
 「あなたがたは、何をしているのですかっ!」
 突然響いた声に、孟徳は足を止めた。公瑾も剣を持つ手を揺らした。
 鍛錬場の入り口に、拳を握りしめ顔を真っ赤にした文若と、疲れた様子の元譲が立っていた。

 

(続。)

拍手[32回]

PR
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
フリーエリア
プロフィール
HN:
のえる
性別:
非公開
メールフォーム
カウンター
アクセス解析

Template "simple02" by Emile*Emilie
忍者ブログ [PR]