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この「幻灯」カテゴリは、chickpea(恋戦記サーチさまより検索ください)のcicer様が書かれた、『花孟徳』という設定をお借りして書かせていただいているtextです。
掲載に許可をくださったcicer様、ありがとうございました。
『花孟徳』は、最初に落ちた場所が孟徳さんのところ・本は焼失・まったく同じループはない、という超々雑駁設計。 雑駁設定なのは のえる の所為です。
何をよんでもだいじょぶ! という方のみ、続きからどうぞ。
(流れは、幻灯 8→11→13→16→21→23→24→25→26→28→29→30となります。)
かたちばかりの笑みにふさわしい派手な動作で紅と青が交差する。
ぎん、と大きな音がして、二人は左右に離れた。
「どうぞ、降参なさってください。息をするのも辛いでしょう」
公瑾が剣を持ち替えながら唇をつり上げた。孟徳は頬に滲んだ血を拭い、人差し指を振って見せた。
「それでも美周郎? あなたはわたしを口説いているのでしょう? じゃあ最後まで付き合わせなさい。」
彼は大人びた子どものように苦笑した。
「困った方だ」
「あなたほどではない」
ふん、と顔を背けた公瑾の髪は一部切れ、裾もかぎ裂きができている。
…あんなふうに、見えたら。わたしの心が見えてしまったら、「あのひと」のように笑って立っていられなくなる。きっと次の輪でも誰彼かまわず――
(道連れにしたくなる)
孟徳は剣を持ち直した。
こんなことではいけない。
文若に抱かれている時も、公瑾と会話している時もそう思った。わたしは満足してはならない。常に乾いていなければならない。もし満足したら、帰ってしまう。でも、そうしたらあのひとに返せるのだろうか。 でも、それではあのひとに申し訳ない。会えなければ、謝ることができない。
この「輪」を回す者が変わった理不尽をわたしは許してはならない。新しい「彼ら」に委ねてはならない。
もう細切れになっていって良いのに。自分なんか亡くなっていいのに。洗い張りのできない自分が苦しくて苦しくて…
彼女は、うっすら笑った。自分、自分、自分。孟徳という名はどこまでも霞んで、自分は彼になれない。
ふっ、と公瑾が剣を下ろした。孟徳は眉をひそめた。
「どうした」
「不愉快です」
「何?」
「あなたはちっともわたしに相対してはくださらない。何のためにわたしがこれを向けたと思っているのですか」
公瑾は剣で地を軽く突いた。
「口説くためでしょう?」
孟徳は笑った。
「ああ、それとも、あなたは美周郎なのだし、己に気がない女子など初めてかな?」
公瑾は本気でむっとしたようだった。
「わたしは、影より他に追うひとがいない。それでもあなたの側に寄りたい」
「なぜ」
「炎は影を作る」
「だったら、無駄だなあ」
孟徳は剣を持ち替えた。
「やっぱり、どちらかが死なないといけないね」
公瑾は面倒そうに息をついた。そして、構えた。
おそらく、これで最後だ。剣を握っているのがやっとだから。でも、この楽しさはなんだろう。あなたが呉れる死は、文若が呉れる死とどう違うのか、やっとはっきりする。
足が地を蹴ろうとして。
「あなたがたは、何をしているのですかっ!」
突然響いた声に、孟徳は足を止めた。公瑾も剣を持つ手を揺らした。
鍛錬場の入り口に、拳を握りしめ顔を真っ赤にした文若と、疲れた様子の元譲が立っていた。
(続。)
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