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二次創作。はじめての方はat first はじめに をご一読ください。
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 PCの調子が悪くて泣きそう。とりあえずバックアップは取ったものの。こうも書きたいものが多い時に!
 
 
 文若さんと花ちゃんです。…なんだか久しぶりな気がする、いつものふたりです。
 
 
 


 
 
 
 すっかり力の抜けた花の躰に、文若は苦笑した。絶対に寝ないでくださいね、と念押ししていたのは誰だったか。厚い上掛けに妻をくるみなおすが、気持ちよさそうに微笑んだだけで起きる様子はない。
 「いちばん最初に、新年おめでとうございますって文若さんに言いたいんです」
 そう告げ、笑顔で寝るなと言い置いていたくせに。
 「そういえばお前は、わたしの側がいちばんよく眠れると言っていたな?」
 起こさぬように囁く。彼女のほつれた髪の一筋を指に巻くと、それはさらりと逃げた。文若は唇を引き結び、髪をもういちど指にしっかり巻いた。香油を塗っているわけではないのに、いい香りだ。…花の、香りだ。
 今夜はひどく冷える、と妻の頬を撫でて彼は思った。五日前から雪がだいぶ積もり、花は雪かき用のへらを振り回して楽しげにしていた。それを見付けたのは昨日の帰宅時で、冷たい手を握りしめたしなめても嬉しそうに笑うばかりでまったく聞いていなかった、と彼はため息をついた。
 雪の音があるんですよと、花は言っていた。静かなばかりで、文若にその音はまだ聞こえない。彼は冷えた、柔らかい妻の耳を隠すように袖を被せた。
 はな、と声に出さずに囁く。
 冬が終わればお前の季節が来る。お前が願って整えた庭に、とりどりの色が降るだろう。
 その色のような新しい衣を贈ろうか。同じ色をわたしに着せたがることさえ無ければいいのだが、と文若は息をついた。自分は濃い色でいい、お前の笑顔が鮮やかに映る。彼は顔を上げた。灯火が冷気に怯えたように震える。
 これから新年の賀に出かけねばならない。丞相はお前を連れてくるようにしつこく言っていたが、眠っているなら幸いだ。
 花の言う「とけい」というものなら、新しい暦が来たことが確実に分かるだろう。しかし、そのようなものなど要らぬ。彼は微笑んだ。わたしがいちばん最初にお前に言うと決めたのだから、それが本当だ。花の額に唇を寄せる。
 …お前だけに、聞こえるように。
 「今年も…どうか、わたしの側にいてくれ。」
 妻は、ふわりと微笑んだようだった。
 
 
 
(2011.1.4)

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