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二次創作。はじめての方はat first はじめに をご一読ください。
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 現代版の文若さんと花ちゃんです。文若さんside。






 朝、重いカーテンを開けると真っ先にその鉢植えに光が当たる。外側にバスケットのような編み模様が描かれている鉢は両の掌に乗るくらいの大きさだ。緑の長い葉がこぼれるように植えてあるその鉢をくれたのは花だ。
 鉢に挿してあったプレートには、気取った筆記体で植物名が書いてある。それを読むまでもなく、同じ鉢が実家にあったから、文若はこの木を知っていた。丈夫というふれこみに反して、細かい気遣いの必要な植物だ。
 植物を育てるのが好き、ということはない。朝顔もヒマワリも宿題だったからやったまでで、店先で配られる百日草や綿の種はそういったことが好きな人物に右から左に渡していた。しかし、これは枯らすわけにはいかない。
 ふと、この鉢植えの傍らで彼女が笑う幻を見る。この部屋に誘うなどいったいいつになるか分からないくせに、胸の内には確たる景色として彼女が住む。
彼女はこの植物の通称を知っているのだろうか。似合いそうだからとはにかんでいた口元に、残っていた言葉はなかったろうか。彼女は時にたいそう大人としてふるまおうとするので、年齢なりのところを愛しているのだと言えないでいる。
 あとで、日差しに艶やかな葉の写真を彼女にメールしよう。お前と思って大事にしているとは決して書けないけれど、この部屋で一番温かな、明るい場所――お前がいつもいて欲しいと願うような場所――にあると書こう。文若は葉を撫でて、窓辺を離れた。

(2015.4.1)

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