二次創作。はじめての方はat first はじめに をご一読ください。
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羽扇エンド(幻) 話の、番外編です。もういろいろすっ飛ばして子桓さんと恋仲の花ちゃんver。
途中がまださっぱりなのですが、ひとつの仮定ということで、大目に見て下さい…すみません。
途中がまださっぱりなのですが、ひとつの仮定ということで、大目に見て下さい…すみません。
花は回廊をこそこそ歩いていた。見つかると困る。
角まで来ると、花はそうっと向こう側を伺った。さんざめく女官の衣装が華やかになっているから、確実に中心部に近づいている。花の目指す場所は、あの向こう側、帝の居る場所だ。
(…よし、大丈夫)
花は胸元で小さく拳を握った。
その時、ぽん、と肩を叩かれて花は大声を上げそうになった。やっとのことで堪える。振り向くと、子建がにこにこと笑っている。
「こんにちわ、義姉上。」
「しし子建さん! …っていうかまだ義姉上じゃないよ!」
「あと半年ではありませんか。」
子建は花の肩越しに、彼女が覗いていた方を見た。
「何を気にしておいでなのですか」
「…内緒にしてくれる?」
「義姉上の仰せでしたら、何事でもお聞きします。」
「子桓さん、今日は帝のところに来てるって聞いたんだけど、まだ居る?」
花がおそるおそる聞くと、子建はきょとんとした顔をした。
「いらっしゃいますよ。」
「ええー」
「…なぜ兄上にお会いするのがお嫌なのですか? まさか兄上が婚儀前にあなたのお気に召さぬことでも?」
ずいと花に詰め寄る子建の瞳は笑っていない。こんなところばかり、みな孟徳に似ているんだからと花は内心で愚痴った。
「…違うの。わたしが悪いの」
「どうなさったのです」
「子桓さんから貰った文の返事をまだ出してないの。」
俯く花に、子建は空を見て細く息をついた。
「そのようなことでしたか。」
「そのようなこと、じゃないよ! あの子桓さんが、珍しくいっぱい書いてくれたんだよ? なのに…わたし、書きたいことから書いていったらすごくたくさんになったの。城の猫が子どもを産んだとか、師匠に褒められたとか、凄い美人が侍女に入ってみんなそわそわしたとか、芙蓉姫が新しい技を編み出したとか、いま帝のところに持って行く土産を自分が選んだとかこれって文じゃないよね、って師匠に笑われちゃって。芙蓉姫にも、あの方に返信するのにこれでは笑われてしまうわ、って…推敲して貰ったら、ざっくり削られたの。そうしたら何も無くなったから、恥ずかしくて、出せなかったの…」
孟徳の子息に出す文じゃない、と孔明に言われたことがいちばん辛い。
「そのようなことを、気にしなくて良かったのだ」
その声に、花は反射的に顔を上げた。子桓が、まさに苦虫をかみつぶしたような顔で立っている。子建は彼の後ろで、横顔を見せて笑っていた。
「子桓、さん…」
「お前の師匠もたいがい意地が悪いな。それを素直に聞くのがお前らしいところだが」
「ご、ごめんなさい!」
後ろを向いて走り出そうとする花の体を、力強い腕が引き留めた。
「逃げるな」
「だって!」
「お前がその内容を俺に話してくれればいいだろう」
「…え?」
固まる花の上に、太いため息が落ちてくる。
「お前の師匠が言いたいこともそれだったのではないか?」
「あ! …ああ、そうか!」
彼はくすくす笑っている弟を振り返った。
「子建、彼女を引き留めておいてくれて礼を言うぞ」
「兄上のためではありませんから、お気になさらず」
「…子建」
「ではごきげんよう義姉上。また必ず、お目にかかれますように」
子建がにこやかに去っていく。それを無表情で見送った子桓は、花から腕を放し、その手を握った。
「では、帝のもとに伺候するぞ」
「ええっ、一緒に?」
「構わぬだろう、もう婚儀の許しは得ている。ゆくぞ」
歩き出した彼に、花は慌てて歩調を合わせた。
「…子桓さん」
「なんだ」
「ごめんなさい、すぐに返事を出さなくて」
花の手を握る力が強くなった。
「子建にさんざんからかわれた。いつもお前に出しているのは本当に懸想文なのかと。」
「…確かに、街道整備の進み具合とか作物の出来とか川普請の進捗状況とか、そういうことだけだよね…」
「だから、思いつくことを書いてみた。それであの長さだ」
彼女は、重かった簡を思い出した。西の庭に咲いた花のこと、新しく父が作らせた庭とその石の産地、母の様子、事細かに記されていた。
「じゃあ、同じだったんだね」
花は笑った。子桓もちらと後ろを振り返って笑った。
「そういうことだな。…それに、お前は短い文でもうれしいと言ってくれるのだから、子建などに惑わされることはなかったのだ。お前が喜ぶと言われたので、つい、な…」
花は急いで彼の前に回った。子桓が立ち止まる。
「どうした」
「あのね、ありがとう。たくさん書いてくれて嬉しかった。でも…子桓さんは子桓さんらしいところが好きだから、無理しないで。」
子桓が笑った。花の髪を太い、無骨な指が撫でる。
「無理ではない。お前が喜ぶなら、なんでもする。だから、帝のもとを下がったら、積もったことを話そう」
「うん!」
本来、無口なこのひとが書いてくれた文を、花は絶対に無くすまいと思った。
(2010.10.4)
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