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二次創作。はじめての方はat first はじめに をご一読ください。
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 ちまたで話題のGS3を、ちみちみやってます。でもゲームが長いので、すごい時間かかりそう。
 っていうかDSで恋戦記とか出たら、文若さんの眉間とかスキンシップできるのかな!?  都督はスキンシップしたら「何をしているのですかはしたない」とか怒られそうだな! …とか夢みてます。


 では、都督と花ちゃんです。



 
 
 

 「…失礼しま~す…」
 軽く扉は叩いたのだが反応が無く、花はそっと言って入った。公瑾から持たされた簡が落ちないように気を配りながら扉を閉める。
 窓の大きい、美しい部屋だ。呉は南の国だからか、色彩も華やかで室内も明るく感じる。置かれたひときわ立派な机は、仲謀の執務机だ。
 そこで書簡に埋もれるようにして仲謀が眠っている。どう見てもうたた寝だ。筆は足下に転がり床に染みをつくっている。高価な絨毯が台無し、と花は目を細めた。こんなところを公瑾に見られたら、恐ろしい笑顔でこんこんと説教されるに違いない。花は足音を立てないようにして仲謀に近づいた。
 彼とは年が近いせいか、花にとっては弟のように思える時がある。いまも、無防備な寝顔をさらしているから余計だ。可愛い、と花は声を潜めて笑った。
 花はあたりを見回した。しんとした昼下がり、いつもならその軽い衣擦れのようにさんざめいて通っていく侍女たちも見えない。
 いくら日がさしていても今日は肌寒い。君主が風邪でも引いたら困るし、と、花は一番上に着ていた衣を脱いで仲謀に掛けた。
 「ん」
 その途端、仲謀がうめいた。花は微笑んで、顔を近づけた。
 「ちゅう~ぼう~?」
 声を低くして呼ぶと、彼は瞬きした。
 「…ああ、花か。」
 「こんなところで寝てたら駄目だよ。」
 「んー…寝てたのか、俺」
 頭をかきながら、仲謀が机の上で寝たまま伸びをする。
 「見つけたのがわたしで良かったね」
 「公瑾でもいいぜ。この眠気が覚めるならな…」
 「お説教してもらう?」
 花が笑った時、ゆっくりと扉が叩かれた。
 「失礼いたします」
 急ぎなのだろう、公瑾が書簡を抱えて現れた。花は慌てて仲謀の側から離れ、いつも公瑾が言い聞かせる、臣下としての立ち位置に戻った。さっきまで噂をしていたためだろう、仲謀がにやりと笑ってそんな花を見る。花も下を向いて笑いを堪えた。公瑾は不審げにふたりを見比べたが、ふいににっこり笑った。
 「仲謀様。失礼ながら、いま、その身にまとっておいでの衣は非常に見覚えがございます。」
 「ああ?」
 仲謀がうろんそうに公瑾を見、それから自分を見直した。そして肩にかかった衣に気づき、花を見た。
 「お前のか?」
 「うん。寒そうだったから」
 「ああ、ありがとな」
 仲謀は非常に爽やかな笑顔で花に衣を返した。受け取ろうとした花の手が、ふ、と宙をきった。
 公瑾がいつの間にか非常に近くに居て、ふたりを当分に見比べている。その手に花の衣があった。花は差し出した手を曖昧に握りしめ、首を傾げて公瑾を見た。
 「公瑾さん?」
 「あなたの主家を思う気持ちはたいへん素晴らしい。わたしも、妻がそのような気持ちで居ると知って非常に心強いですよ。」
 …間違いなく褒められている、褒められているはず、と花は自分に言い聞かせた。しかし、公瑾の向こうに見える仲謀が既に素知らぬ顔で書簡を読み込んでいるのは何故だ。
 「しかし、花」
 仲謀が声を出さずに、(来たぞ)と口を動かしたのが見えた。
 「この衣は、いつあなたに差し上げたものでしたか?」
 「えーと。冬がはじまったころに、公瑾さんがくださいました。」
 「そうですね。この文様は何ですか?」
 「わたしの名前にちなんで、春の花を縫い取りしてくれたものです。」
 「焚きしめた香は」
 「公瑾さんと同じものです。」
 「たいへんよく覚えておいでのようで結構。…ではなぜ、あなたは新婚の夫の贈り物を他の男の肩に掛けるのですか?」
 「公瑾さんだってさっき言ったじゃないですか。仲謀が風邪でもひいたら駄目だから」
 「そういうときは侍女を呼びなさい。」
 「近くに居なかったので…」
 「誰かに頼んで呼べばいいでしょう」
 「呼んだら、仲謀が起きちゃうと思ったんです」
 「あなたは、あるじの身を心配するくせに、あるじが机で寝ているという非常にだらしない行為は許すのですか。」
 「公瑾さんだってうたたねすることはあるじゃないですか」
 「しかしあなたは一度たりとも衣を掛けてくれたことなどありません」
 「公瑾さんはひとりで起きますもん。」
 「…そういう問題ではありません」
 「だあっっ」
 ばん、と机を叩いて仲謀が立ち上がった。
 「お前ら、いい加減にしろっ」
 「仲謀…」
 「公瑾! お前、じゃあ、俺が花に衣を贈って、それを俺に掛けてればいいのかよ?」
 公瑾は珍しく、言葉に詰まったようだった。その隙に、仲謀に真顔で向き直られて花は背筋を伸ばした。
 「お前もお前だ。俺がお前の衣をかぶってたら、大げさに言ったら公瑾は妻を俺に寝取られたとかあることないこと言われるかも知れないんだぞ。」
 「断じて空耳だとは思いますしいちおう念のためお聞きしますけれども、非常に恐ろしいことをお聞きしたような気がいたしますね何か仰いましたか、仲謀様」
 「言ってねえよ!」
 笑顔の公瑾から後ずさって怒鳴った仲謀は、花を見て目をむいた。
 「なに笑ってんだお前!」
 「だって、居眠りする公瑾さんに衣を掛けてあげたりしてもいいんだなあって思ったの。」
 「…んだと?」
 「だって公瑾さん武人でしょう? 気配に鋭くて、居眠りしててもわたしが近づいただけで起きちゃうし、朝もわたしが起きる前にばっちり起きてるし。やってみたかったの、『あなた、起きてください』って! 新婚みたいだよね! 玄徳さんには掛けてあげたこともあるんだけど、公瑾さんは無いなあってちょっと寂しかったんだ~。」
 きゃっ恥ずかしい、と言いながらうっとり頬を赤らめる花の前、固まっている公瑾を見上げて仲謀が長々と息を吐いた。
 「…とりあえずお前ら帰れ…」
 「あ、仲謀。さっきの書簡の返事はいつ取りに来ればいい?」
 「もう今日は来んな!」
 「え?」
 「…帰りますよ花」
 低い声とともにほとんど引き上げるような力で腕を引かれ、花は目を丸くした。
 「こ、公瑾さん?」
 「あなたとはよく話し合わなければなりません。」
 「え? え?」
 訳が分からず引っ張られていく花の後ろで扉が閉まる。
 
 
 
 だから、仲謀が「っていうかお前も玄徳とか言うなよ…」と呟いたことを、花は知らない。


(2010.7.1)

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