二次創作。はじめての方はat first はじめに をご一読ください。
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リクエストいただきました、おひげな話の、糸目さん編です。ありがとうございます~。
正直、どういうビジュアルになるのか、オソロシイ気もします…
公瑾はついに筆を置いて花に向き直った。想い人がびくりと体を強ばらせて見つめ返してくる。咄嗟のことで、目をそらす余裕がなかったようだ。彼はため息をついた。
「先程から、ずいぶん熱い視線を送ってくださいますね。何ですか、仕事中に」
「ご、ごめんなさい」
俯く花に近寄ると、彼は机に手をついて顔をのぞき込んだ。
「何かわたしの顔についていましたか?」
「いえ、ついてないです。…っていうか、ついてないから見てたんですけど」
「…相変わらず突拍子もありませんねあなたは」
「ち、ちがうんです。あの、子敬さんとさっきお話してて」
確かに、彼のもとへと遣いには出した。しかし、不審に思うほど遅くはなかった。公瑾はにっこり笑った。
「どのような話をしたのですか、花」
「…怒らないで下さいね」
「ほう、わたしが怒りそうな話であるということは分かっているのですね?」
「違います! 興味、っていうか」
「花」
静かに呼ぶと、彼女の肩がぴしりと上がり、観念したように下がった。
「子敬さんって、可愛いひげがあるじゃないですか。」
ぼそぼそと言う彼女に、眉間のしわが寄る。
「可愛い?」
「違います、ひげです。」
「…まあいいでしょう。それで」
「公瑾さんはどうしてないんでしょうねって…」
だんだん小さくなる花の声に、公瑾は盛大にため息をついてみせた。
「詳細におたずねしても意味不明ですね。どうしてそういう興味を持ったのですか。…あなたもしや、ひげのある男性で気になる方でもできたのですか」
思わず、どんどん声が低くなる。花がぱっと顔を上げ、首を激しく左右に振った。髪飾りがしゃらしゃらと派手な音を立てる。
「不作法な真似はおやめなさい。…それで、どうなのです」
「公瑾さん以外に好きな人なんてできるはずがないです!」
「そうですか」
わざと素っ気なく言うと、彼女は唇を尖らせた。
「わたしばっかりこういうことを言うの、ずるいです」
「あなたが照れて聞いてくださらないからでしょう」
自分でも嘘ばかりだと思いながら言うと、花はぴしりと公瑾を見返してきた。
「じゃあ、わたしのこと、好きですか?」
「愛していますよ」
まっすぐ見つめられたことを受けて立つようにとっておきの声で囁くと花の顔が鮮やかに紅くなり、彼女はついと横を向いた。
「やっぱりずるいです」
「それよりも、花。あなたが好みというなら、ひげを生やして差し上げましょうか?」
「え?」
きょとんとこちらを見る花に、彼女が好きだという笑みを返してやる。
「わたしもそろそろ威厳というものを身につけねばならぬ年齢ですしね。」
「ひげが生えると威厳が増すんですか?」
「…あなたはいったい何のために子敬どのとそんな話をしたのですか」
あどけなく聞いてくる彼女に微妙に頭痛を覚え始めた公瑾がもう一度聞くと、花はにこにこ笑った。
「公瑾さんは、皆さんみたいにひげがなくても格好いいですよね、って言ったんです」
彼は少しの沈黙のあと、長く息を吐いた。
「花。そういうことを言うのは、わたしだけにしておきなさい」
「どうしてですか?」
今頃、間違いなくあの姉妹に伝わっているだろう惚気を胸の中で反芻して、公瑾はきびすを返した。そう言っている時の恋人が誰より可愛らしいからだとは言えず、手元の簡に目を落とす。教えてくださいよう、と拗ねる彼女の声を聞きながら、姉妹がからかいに来たらどうかわそうかと思いつつ、彼は筆を取り上げた。
(2010.7.21)
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