二次創作。はじめての方はat first はじめに をご一読ください。
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「玄徳さんちの花ちゃん」「孟徳さんちの花ちゃん」「文若さんちの花ちゃん」「公瑾さんちの花ちゃん」「仲謀さんちの花ちゃん」が集まっておしゃべりしている、コネタです。
「周花ちゃん」
柔らかい声に、彼女は振り向いた。魏の娘となった荀花が微笑している。
「どうしたんですか」
「ちょっと、お酒の匂いにあてられちゃって」
大げさに顔の前で手を振ると、荀花が振り返って苦笑した。
大河の川岸に付けられた船は大輪の花で飾り立てられている。そこに張られた幔幕から、仲謀が何か上機嫌で叫んでいる声と、玄徳の笑い声が聞こえる。さっきまでは公瑾が妙なる琵琶の音を響かせていたのだが、それが終わった途端、無礼講になったようだ。
「楽しそうね」
「はい。良かったです。みんな一緒だと、そうそう危ないことにもならないし」
危ないこと、というのは、玄徳と孟徳の言い合いとか、仲謀が酒に飲まれることとかを指すのだろう。周花は苦笑した。
「確かにね。」
「それにしても、中州に船が着いたら宴がお開きになるからって、じゃあ出港しないって言うのも孟徳さんらしいですね」
「そうね。でもいいよ、こんなにのびのびした宴なら大歓迎~。」
周花の隣に座りながら、荀花が大きく頷く。
「そうですよね、公のお酒だと、挨拶を受ける順番とか、挨拶に行く順番とか大変で、何度しても慣れません。まあでも、このあとお正月にしなきゃいけないんですけど」
荀花がちろりと舌を出した。周花は彼女の掌を軽く叩いた。
「ねえ、ちょっと思い出してたんだけど」
「はい?」
「向こうだとさ、年末になると『来年の運勢特集』の雑誌とか買ってなかった?」
荀花は懐かしげな笑顔になった。
「ああ、買ってました! みんなで一冊買って、回し読みして。すぐ内容は忘れちゃうんですけどね、ナントカ数とか計算して、必死だったなあ」
「カレシができるのはいつ、とかね!」
「そうそう! ラッキー星座ランキングとか」
周花は頭上を見上げた。この場所は夜のはずだが、いつも曖昧な霧と光で満たされている。テレビでみた白夜のようだ、と思う。
「こっちに来てからも、運勢の押し売り…っていうか、そういう職業のひとが家に来ますよ。うちは文若さんがそういうのが好きじゃないから、他のお家よりは来てないらしいですけど」
「公瑾さんもそうよ。ただ、さっきちらっと聞いたら、玄徳さんとか仲謀くんは、そういうのを聞くのも仕事なんだってね。」
「そうらしいですねー。孟徳さんのところはちょっと違うみたいですけど、とにかく、ちょっと変わったものを瑞兆だの何だのって売り込みに来るって、曹花ちゃんはうんざりしてました。孟徳さんが取り合わないと、曹花ちゃんのところに持ち込んだりするんですって」
「うわあ、メーワク。好きな人の嫌いなものを、そう簡単に受け入れられるワケないじゃない」
「ですよね~。」
荀花は深く頷いている。
「ねえ、やっぱり、みんながみんな、星は違うんだよね?」
「違うんでしょうねえ」
周花につられて荀花も空を見た。ゆったりと動く白い帯の中に、船を叩く水音が混じる。
「…ここじゃ、分かりませんけど」
「そうだね。…わたしね、荀花ちゃん」
はい、と言って向けられるきょろんとした大きな目は、公瑾によくからかわれるところだ。大きな目で何を見抜いているのやら、と、頬を撫でられる。
「あっちみたいに気楽な運勢はもう測れないかもしれないけど、わたしは荀花ちゃんやみんなの空に幸せだけあればいいと思うよ。」
荀花の顔が一瞬、泣きそうに歪んだ。彼女は柔らかく周花の体に腕を回した。
「わたしも、です」
文若と同じ香だ。あの気むずかしそうなひとも、こうして彼女を抱きしめるのだろうか。
「ずっと、あるよね。」
「ずっとあるように、頑張ります。…あ、文若さんに叱られない程度に」
「…わたしもだ」
顔を見合わせ、笑い合う。
ああ、こうして、あたしたちはみんな違ってしまった。微笑む時に袖で口元を覆う癖も、困った時につくため息も、いたずらを考える時の視線配りも、みんな相手に似て。きっと星の色も違うのだろう。つい休みがちになる星読みの講義を、来年はもっと真面目にしよう、と周花は内心で拳を握った。
おーい、というのんびりした呼び声にふたりは振り向いた。船縁に孟徳が立っている。すっかり出来上がっているらしい、満面の笑顔だ。
「可愛い子たちだけで居ないで、こっちに来て俺も混ぜてよ。」
ふたりはひとしきり笑って、手を繋いで立ち上がった。駆けるふたりの比布が柔らかくたなびく。
船はさざめきを乗せて、ゆっくりと大河を動き始めた。
(2011.12.27)
柔らかい声に、彼女は振り向いた。魏の娘となった荀花が微笑している。
「どうしたんですか」
「ちょっと、お酒の匂いにあてられちゃって」
大げさに顔の前で手を振ると、荀花が振り返って苦笑した。
大河の川岸に付けられた船は大輪の花で飾り立てられている。そこに張られた幔幕から、仲謀が何か上機嫌で叫んでいる声と、玄徳の笑い声が聞こえる。さっきまでは公瑾が妙なる琵琶の音を響かせていたのだが、それが終わった途端、無礼講になったようだ。
「楽しそうね」
「はい。良かったです。みんな一緒だと、そうそう危ないことにもならないし」
危ないこと、というのは、玄徳と孟徳の言い合いとか、仲謀が酒に飲まれることとかを指すのだろう。周花は苦笑した。
「確かにね。」
「それにしても、中州に船が着いたら宴がお開きになるからって、じゃあ出港しないって言うのも孟徳さんらしいですね」
「そうね。でもいいよ、こんなにのびのびした宴なら大歓迎~。」
周花の隣に座りながら、荀花が大きく頷く。
「そうですよね、公のお酒だと、挨拶を受ける順番とか、挨拶に行く順番とか大変で、何度しても慣れません。まあでも、このあとお正月にしなきゃいけないんですけど」
荀花がちろりと舌を出した。周花は彼女の掌を軽く叩いた。
「ねえ、ちょっと思い出してたんだけど」
「はい?」
「向こうだとさ、年末になると『来年の運勢特集』の雑誌とか買ってなかった?」
荀花は懐かしげな笑顔になった。
「ああ、買ってました! みんなで一冊買って、回し読みして。すぐ内容は忘れちゃうんですけどね、ナントカ数とか計算して、必死だったなあ」
「カレシができるのはいつ、とかね!」
「そうそう! ラッキー星座ランキングとか」
周花は頭上を見上げた。この場所は夜のはずだが、いつも曖昧な霧と光で満たされている。テレビでみた白夜のようだ、と思う。
「こっちに来てからも、運勢の押し売り…っていうか、そういう職業のひとが家に来ますよ。うちは文若さんがそういうのが好きじゃないから、他のお家よりは来てないらしいですけど」
「公瑾さんもそうよ。ただ、さっきちらっと聞いたら、玄徳さんとか仲謀くんは、そういうのを聞くのも仕事なんだってね。」
「そうらしいですねー。孟徳さんのところはちょっと違うみたいですけど、とにかく、ちょっと変わったものを瑞兆だの何だのって売り込みに来るって、曹花ちゃんはうんざりしてました。孟徳さんが取り合わないと、曹花ちゃんのところに持ち込んだりするんですって」
「うわあ、メーワク。好きな人の嫌いなものを、そう簡単に受け入れられるワケないじゃない」
「ですよね~。」
荀花は深く頷いている。
「ねえ、やっぱり、みんながみんな、星は違うんだよね?」
「違うんでしょうねえ」
周花につられて荀花も空を見た。ゆったりと動く白い帯の中に、船を叩く水音が混じる。
「…ここじゃ、分かりませんけど」
「そうだね。…わたしね、荀花ちゃん」
はい、と言って向けられるきょろんとした大きな目は、公瑾によくからかわれるところだ。大きな目で何を見抜いているのやら、と、頬を撫でられる。
「あっちみたいに気楽な運勢はもう測れないかもしれないけど、わたしは荀花ちゃんやみんなの空に幸せだけあればいいと思うよ。」
荀花の顔が一瞬、泣きそうに歪んだ。彼女は柔らかく周花の体に腕を回した。
「わたしも、です」
文若と同じ香だ。あの気むずかしそうなひとも、こうして彼女を抱きしめるのだろうか。
「ずっと、あるよね。」
「ずっとあるように、頑張ります。…あ、文若さんに叱られない程度に」
「…わたしもだ」
顔を見合わせ、笑い合う。
ああ、こうして、あたしたちはみんな違ってしまった。微笑む時に袖で口元を覆う癖も、困った時につくため息も、いたずらを考える時の視線配りも、みんな相手に似て。きっと星の色も違うのだろう。つい休みがちになる星読みの講義を、来年はもっと真面目にしよう、と周花は内心で拳を握った。
おーい、というのんびりした呼び声にふたりは振り向いた。船縁に孟徳が立っている。すっかり出来上がっているらしい、満面の笑顔だ。
「可愛い子たちだけで居ないで、こっちに来て俺も混ぜてよ。」
ふたりはひとしきり笑って、手を繋いで立ち上がった。駆けるふたりの比布が柔らかくたなびく。
船はさざめきを乗せて、ゆっくりと大河を動き始めた。
(2011.12.27)
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