二次創作。はじめての方はat first はじめに をご一読ください。
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今回はタイトルに偽りあり(笑) すみません。
花ちゃんに、作中の歌をうたってもらいのはワタシかも。
そしてきのう、赤い人がたっかそうなスーツ着て夢に出てきました。なんの職業か分からないまま目が覚めました。もうちょっとだったのに。
「…孟徳さん」
小さな小さな声に、孟徳はうすく目を開けた。気遣う妻の顔が、夕暮れに浮かび上がっている。
「具合はどうですか?」
「花ちゃんの顔を見たし、良くなった。」
へらりと笑ってみせると、年の離れた妻はその年齢に似合わない、しかつめらしい顔をした。
「まだ駄目みたいですね。」
「花ちゃんってば、そんな文若みたいなこと言う~」
「もういいです。まだ寝ててください。」
肩を怒らせて身を返す花の袖を、孟徳は素早くつかんだ。
「ここに居てよ。君が居ると気分がよくなるから。」
「でも」
「薬も効いてるし、本当に頭は痛くないんだ。ただ今日いちにちずっと寝てたから、だるいだけ。夕ご飯は君と食べたいしさ。」
ね? と笑ってみせると、花は少し考えて頷いた。傍らの椅子に座る。膝の上にきちんと揃えられた手に、孟徳は手を重ねた。
「もう夕方なんだね。」
「はい。今日はとってもいい天気でしたよ。」
「そう。」
「西の庭の花が満開になったそうです。よろしければ足をお運びください、って、庭師さんが言ってました。」
「じゃあ一緒に見に行こう」
「…ありがとうございます、孟徳さん」
花が、ほんとうに嬉しそうに笑う。尋常ではない忙しさの夫を気遣うからこそ、こんなにきれいに笑えるのだろう。それが嬉しくて、約束をたくさんする。
「今日はその簪をしてくれてたの? このあいだあげたものだよね」
「はい。」
花は、はにかんで簪に触れた。西から来た貴重な小さい玉を沢山つらねたそれは、実は孟徳が特別に注文して作らせたものだ。うすい緑色は彼女の少女っぽい顔立ちを引き立て、また妻としての初々しい色香も引き出している。
「とてもいい音がします。…でももう、簪の箪笥がいっぱいになってしまいましたよ。」
「じゃあまた箪笥を作らせよう」
孟徳が何の気なしに言うと、花は、彼を睨んだ。
「孟徳さん」
「だーめ。君を可愛くするのは俺の仕事。」
「これ以上、孟徳さんの仕事が増えたら大変ですから、もういいです」
論旨がねじれていることに彼女は気づいているだろうか。怒った顔もかわいいなー、と段々覚醒してきた頭で考える。彼女はつん、とあごを反らした。
「文若さんに相談しました。」
「は!?」
意外と言えば意外な名前が出てきて、孟徳は本気であっけにとられた。妻が文若を頼りにしていることは知っていたが、よりにもよってそんな相談をするとは。
「孟徳さんが、わたしのためにたくさん服や飾るものを買ってくださるから困る、と相談しました。文若さんは、わたしがねだったものでないのなら有り難く頂戴しておけ、と言うのですけど、納得できないと言いました。そうしたら、こうやって」
花は、文若がよくやる、額に手を当てる仕草をした。
「深いため息をついてから、お前が喜ぶことは丞相がいちばんお望みのことなのだから、お前が望まないことは素直に伝えればいい。そのあとは丞相と相談しろ、それにこういう相談はなるべくこれきりにしろ、相談を持ちかけるならわたしだけにしておけ、他の者が迷惑だって、一息に怒られました。」
「花ちゃんって大胆だなあ」
孟徳はこらえきれずに笑い出した。その相談をされた時、あの堅物がどういう表情をしたのか考えてみるだけで楽しくなる。それと同時に、自分が情けなくも頭痛で寝込んでいる間に妻がそんな相談を他の男にしていたことに嫉妬する。…なんなんだ、最後の言葉は。
「笑い事じゃないです」
「ごめんごめん」
(諦めてないのかなあ…文若)
正面切って問えば、何を馬鹿なことをそんなことを言っている暇があるなら仕事をしてくださいと一気に言い放つだろう。だが、そこに嘘が混じることを本人も孟徳も分かっている。だから、聞かない。
(花ちゃん、花ちゃん)
君が明るく笑ってくれるのを、どれだけの人間が待っているか知らないだろう? 君を抱く俺の手を、何人の男がさもしげに見ているか気づいていないだろう?
…だから、文若。
「主君の妃を見つめる」心を保つなら、俺は俺の中の獣を伏せておこう。ただし一瞬でも油断したら、俺はお前の喉を切り裂くだろう。血を浴びて笑うだろう。お前の誇り高さが、愛しい彼女の前で俺にそんなことはさせないと証明してくれるよな?
「ねえ、でもさ」
すべすべした彼女の手を撫でる。初めて会ったときから今まで、これほど印象の変わらない娘もいない。
まっしろ、だ。
絹より滑らかで、鳥の羽より軽く、西から来る壊れやすい器の肌より奥深い、白。
「かわいい君を見るのは、俺の大事な生き甲斐なんだよ。誰にも見せたくなくなっちゃうのが困りものだけど。」
「生き甲斐なんて、大げさです」
顔を紅くしたまま花は手を伸ばして孟徳の掛け布を彼の顔の上まで引き上げ、自分を彼から見えないようにしてしまった。孟徳は含み笑いをした。空々しくあくびをする。
「ああ、よく寝た。」
「良かったです」
「気分がよくなった仕上げに、花ちゃん。君の国の歌をまた歌ってよ。君の声、好きだから。」
「…なにがいいですか?」
照れて口ごもった彼女に、孟徳は薄闇の中で思った。
「うーん、あの、『かなりあ』がどうしたこうした、って歌。あれ、君の声に合ってて好き。」
「あれは子守歌ですよ。…孟徳さん、夕ご飯は一緒に食べてくれるんでしょう?」
拗ねた声に、孟徳は掛け布を跳ね上げて起き、彼女を抱きしめた。手の届くぬくもりを確かめるように撫でまわす。
「も、孟徳さん!? 急に動いちゃだめですっ」
「あー、やっぱり、君の声より君の体が好き。」
「ごごご誤解されるようなこと言わないでください!」
ちゅ、と音を立てて、孟徳はとんちんかんな反論をする妻の熱い頬に口づけた。
(2010.4.15)
小さな小さな声に、孟徳はうすく目を開けた。気遣う妻の顔が、夕暮れに浮かび上がっている。
「具合はどうですか?」
「花ちゃんの顔を見たし、良くなった。」
へらりと笑ってみせると、年の離れた妻はその年齢に似合わない、しかつめらしい顔をした。
「まだ駄目みたいですね。」
「花ちゃんってば、そんな文若みたいなこと言う~」
「もういいです。まだ寝ててください。」
肩を怒らせて身を返す花の袖を、孟徳は素早くつかんだ。
「ここに居てよ。君が居ると気分がよくなるから。」
「でも」
「薬も効いてるし、本当に頭は痛くないんだ。ただ今日いちにちずっと寝てたから、だるいだけ。夕ご飯は君と食べたいしさ。」
ね? と笑ってみせると、花は少し考えて頷いた。傍らの椅子に座る。膝の上にきちんと揃えられた手に、孟徳は手を重ねた。
「もう夕方なんだね。」
「はい。今日はとってもいい天気でしたよ。」
「そう。」
「西の庭の花が満開になったそうです。よろしければ足をお運びください、って、庭師さんが言ってました。」
「じゃあ一緒に見に行こう」
「…ありがとうございます、孟徳さん」
花が、ほんとうに嬉しそうに笑う。尋常ではない忙しさの夫を気遣うからこそ、こんなにきれいに笑えるのだろう。それが嬉しくて、約束をたくさんする。
「今日はその簪をしてくれてたの? このあいだあげたものだよね」
「はい。」
花は、はにかんで簪に触れた。西から来た貴重な小さい玉を沢山つらねたそれは、実は孟徳が特別に注文して作らせたものだ。うすい緑色は彼女の少女っぽい顔立ちを引き立て、また妻としての初々しい色香も引き出している。
「とてもいい音がします。…でももう、簪の箪笥がいっぱいになってしまいましたよ。」
「じゃあまた箪笥を作らせよう」
孟徳が何の気なしに言うと、花は、彼を睨んだ。
「孟徳さん」
「だーめ。君を可愛くするのは俺の仕事。」
「これ以上、孟徳さんの仕事が増えたら大変ですから、もういいです」
論旨がねじれていることに彼女は気づいているだろうか。怒った顔もかわいいなー、と段々覚醒してきた頭で考える。彼女はつん、とあごを反らした。
「文若さんに相談しました。」
「は!?」
意外と言えば意外な名前が出てきて、孟徳は本気であっけにとられた。妻が文若を頼りにしていることは知っていたが、よりにもよってそんな相談をするとは。
「孟徳さんが、わたしのためにたくさん服や飾るものを買ってくださるから困る、と相談しました。文若さんは、わたしがねだったものでないのなら有り難く頂戴しておけ、と言うのですけど、納得できないと言いました。そうしたら、こうやって」
花は、文若がよくやる、額に手を当てる仕草をした。
「深いため息をついてから、お前が喜ぶことは丞相がいちばんお望みのことなのだから、お前が望まないことは素直に伝えればいい。そのあとは丞相と相談しろ、それにこういう相談はなるべくこれきりにしろ、相談を持ちかけるならわたしだけにしておけ、他の者が迷惑だって、一息に怒られました。」
「花ちゃんって大胆だなあ」
孟徳はこらえきれずに笑い出した。その相談をされた時、あの堅物がどういう表情をしたのか考えてみるだけで楽しくなる。それと同時に、自分が情けなくも頭痛で寝込んでいる間に妻がそんな相談を他の男にしていたことに嫉妬する。…なんなんだ、最後の言葉は。
「笑い事じゃないです」
「ごめんごめん」
(諦めてないのかなあ…文若)
正面切って問えば、何を馬鹿なことをそんなことを言っている暇があるなら仕事をしてくださいと一気に言い放つだろう。だが、そこに嘘が混じることを本人も孟徳も分かっている。だから、聞かない。
(花ちゃん、花ちゃん)
君が明るく笑ってくれるのを、どれだけの人間が待っているか知らないだろう? 君を抱く俺の手を、何人の男がさもしげに見ているか気づいていないだろう?
…だから、文若。
「主君の妃を見つめる」心を保つなら、俺は俺の中の獣を伏せておこう。ただし一瞬でも油断したら、俺はお前の喉を切り裂くだろう。血を浴びて笑うだろう。お前の誇り高さが、愛しい彼女の前で俺にそんなことはさせないと証明してくれるよな?
「ねえ、でもさ」
すべすべした彼女の手を撫でる。初めて会ったときから今まで、これほど印象の変わらない娘もいない。
まっしろ、だ。
絹より滑らかで、鳥の羽より軽く、西から来る壊れやすい器の肌より奥深い、白。
「かわいい君を見るのは、俺の大事な生き甲斐なんだよ。誰にも見せたくなくなっちゃうのが困りものだけど。」
「生き甲斐なんて、大げさです」
顔を紅くしたまま花は手を伸ばして孟徳の掛け布を彼の顔の上まで引き上げ、自分を彼から見えないようにしてしまった。孟徳は含み笑いをした。空々しくあくびをする。
「ああ、よく寝た。」
「良かったです」
「気分がよくなった仕上げに、花ちゃん。君の国の歌をまた歌ってよ。君の声、好きだから。」
「…なにがいいですか?」
照れて口ごもった彼女に、孟徳は薄闇の中で思った。
「うーん、あの、『かなりあ』がどうしたこうした、って歌。あれ、君の声に合ってて好き。」
「あれは子守歌ですよ。…孟徳さん、夕ご飯は一緒に食べてくれるんでしょう?」
拗ねた声に、孟徳は掛け布を跳ね上げて起き、彼女を抱きしめた。手の届くぬくもりを確かめるように撫でまわす。
「も、孟徳さん!? 急に動いちゃだめですっ」
「あー、やっぱり、君の声より君の体が好き。」
「ごごご誤解されるようなこと言わないでください!」
ちゅ、と音を立てて、孟徳はとんちんかんな反論をする妻の熱い頬に口づけた。
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