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二次創作。はじめての方はat first はじめに をご一読ください。
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 文若さんと花ちゃん。色っぽい…のかな…





 自分は非力な存在だと思う。
 例えばここで雷が落ちたらひとたまりもない。あるいは騎馬が突っ込んできたら終わりだ。矢なら一撃でない限り少しは長らえるかもしれないがまあ時間の問題だろう。大岩が落ちてきたら、屋根が崩れたら、酒乱の元譲が打ちかかってきたら…どれもこれも、立ち向かえるものではない。
 しかし、腕の中の娘は、ここであれば何の問題もないというように動かない。目を閉じ、胸に僅かに握った手を添え、心臓の音を聞くかのように胸に頭をつけて黙っている。うなじからまろやかな白い肌が覗いている。腕に押し当てられた胸は呼吸につれてかすかに上下する。
 間近で猫が鳴き、娘は目を開いた。
 「猫ですね」
 「ああ」
 「いつもの子でしょうか」
 声を追うように頭を巡らす娘の、伸びきらない髪が揺れる。
 「お前はあの猫が好きなのか? もっと見目のいい猫はいくらでもいるだろう」
 「ちょっとふてぶてしいくらいが可愛いんですよ」
 なるほど、それで恐ろしくふてぶてしい上司の居座りにも動じぬ訳かとは、言わない。
 娘はまた、目を閉じた。ただ憩うという名の絵に戻るその背を抱き直す。
 「猫はいいのか」
 ふふ、と微笑った息だけで彼女は動かない。明け始めた薄闇に笑む目尻が見える。
 とりあえず、照れ隠しでこんなことを考えているというのだけは、認めねばならぬと思った。

 


(2014.12.13)

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