忍者ブログ
二次創作。はじめての方はat first はじめに をご一読ください。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 文若さんと、ちっちゃくなったおくさま・花ちゃんのお話です。
 苦手な方はまわれみぎなさってくださいね。
 
 

 
 
 小さい手にしっかりと握られている文若の襟は、すっかり皺がついている。泣き声が小さくなってきたのを見計らってその顔をのぞき込むと、紅くなった鼻を手巾で隠すようにして花がこちらを見る。
 「花。なぜ扉を開けた」
 「…ごめ、なさい」
 「謝罪は既に聞いた。いまは理由を聞いている」
 「孟徳さんが、どうしてもここから動かないって言うから…顔を見せるだけならいいかと思って…でも、扉を蹴破られて」
 また大きな目に涙が浮かぶ。よほど怖かったのだろう。その頭を抱き込んで、文若は目の前で平然と茶を飲む孟徳を睨んだ。くく、と子建が笑う。
 「それにしても、ずいぶん可愛らしい姿になって」
 「しけんさん、わらわないでください」
 きっと顔を上げた花の目尻に滲んだ涙に慌てて手巾を押し当てる。花は手巾をきつく握ってうなだれた。
 「どうやったらもとにもどるのか、わからないんですから」
 「では、もどるまでおっとりとお暮らしなさい」
 「やです!」
 「これ、花! 公子になんという口の利き方だ」
 「わたしはぶんじゃくさんのおくさんです! こんなにちっちゃかったら、きがえだってなんだって、手伝えない…」
 花がまた、ぐすぐす鼻を鳴らし始めた。文若はその髪を撫でた。
 「嘆いても始まらぬぞ。」
 「でも」
 「わたしはきちんと待つ。」
 「おくさんでいても、いいですか?」
 「勿論だ。朝から何度も言っているだろう?」
 小さな頭を撫でると、花はくしゃりと顔を歪めたが、泣き出しはしなかった。
 「…待つって、何をだろうな」
 「父上、そこをあえてお聞きになりますか」
 わざとらしい小声は聞き流した。
 「しかし本当にお可愛らしい。明日、衣を持参してもよいですか、令君」
 「どうぞ、お気遣いなく」
 「花ちゃん、やっぱり俺の膝においでよ。女の子の気持ちの分からないそんな男の膝より、ずっといいってば」
 花は唇を尖らせた。
 「なにをいってるんですか、もうとくさん。ぶんじゃくさんはおくさんのきもちだけ分かればいいんです。」
 子建が嬉しそうに声を上げて笑った。
 「ふふ、やはりこうでなくては」
 「文若、俺は花ちゃんを膝に乗せるまで帰らないぞ!」
 「では父上、ここで引退ください。あとはわたしと兄上で」
 「お前は口を出すな!」
 もはや、ただの親子げんかになった二人から視線を逸らした花が、こてんと文若の胸に凭れた。彼は慌てて小さな耳に口を寄せた。
 「どうした」
 「ねむ…く、なり、ました」
 「無理もない、訳も分からず連れて行かれるところだったのだからな。怖かったろう。ここでいい、休みなさい」
 囁くと、少女は安心したように笑った。そうしてふわんと頷くと、そのまま寝入ってしまった。
 「寝顔もかーわいいー」
 「輝いて見えますね」
 ――油断も隙もない。
 いつの間にか口論を止め妻を凝視する二人から寝顔を隠すように、文若は少女を袖でくるんだ。
 
 
 (続。)
(2011.7.12)

拍手[40回]

PR
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
フリーエリア
プロフィール
HN:
のえる
性別:
非公開
メールフォーム
カウンター
アクセス解析

Template "simple02" by Emile*Emilie
忍者ブログ [PR]