二次創作。はじめての方はat first はじめに をご一読ください。
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コネタに近いです。
公瑾さんと、花ちゃん。
公瑾さんと、花ちゃん。
「大喬殿」
柔らかな声に、娘は振り返った。
「公瑾」
「今日は小喬殿と一緒ではないのですね」
分かっていながら、念を押すような口ぶりだ。彼女は笑った。
「ちょっと風邪っぽい、って寝てるよ。妹に用?」
公瑾は少し首を傾げた。そして、微笑んだ。
「いいえ、あなたで良かった。少し伺いたいことがあります。」
「おやつ食べる?」
「いいえ、歩きながらで」
公瑾は言うなり、ゆっくり歩き出した。娘はとてとてと横に並んだ。
「花のことです」
「花ちゃん?」
「あなたがた、何を彼女に言ったのですか。」
柔らかく静かな声は、よく研がれた刃のようだ。
彼の妻が、故郷の昔話だと話してくれたことに、剣術の達人に斬られたひとが一町も行ってから首と胴が離れて斬られたことに気づいたというものがあった。びっくりしますよねと笑っていた花に比べ、姉妹は笑顔を合わせながらも内心はひやりとしていた。公瑾の笑顔――正しくは昔の公瑾がそれに似ていると思ったからだ。
大喬は立ち止まった。に、と笑う。その笑顔に、反射的に彼が警戒するのを知ってなお、その顔を作った。黙っていると、苛立ったように公瑾はふわりと袖を払った。
「先日来、花がわたしを伺っています。子細に観察しています。それは熱心な視線ですが、怯えている様子でもない。」
「公瑾が爆笑することってなんだと思う、って聞いただけだよ。」
彼は瞬きした。彼女の言った内容が染み渡っていくような間を、彼女は興味深く見守った。
公瑾は深くため息をついた。
「ずいぶんと難題を出すものだ」
「そうかな?」
「そうですよ。花を困らせないでください」
大喬は足早に公瑾の前に回り込んだ。
「花ちゃんは困ってないよ」
「しかし」
「だーいじょうぶ、困ってないから!」
そのまま、袖を翻して走り去る。背中でまた深いため息が聞こえたようだが、立ち止まらない。
伯符と居た頃でさえ、彼が声を上げて笑うことなど珍しかった。そうして彼と公瑾が居たのはあんまり短い間だった。けれど花はこれからいくらでも公瑾を見ていられる。実際、花は、ながぁい宿題になりそうですねえと笑ったのだ。
いくらでも試してみればいいのよと彼女はにんまりとした。――ね、伯符。
小さなつむじ風は回廊を駆け抜けて草の間へと消えていった。
(2011.7.13)
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