二次創作。はじめての方はat first はじめに をご一読ください。
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リクエストちょうだいしました、「ひとよりも」の後刻編になります。
小ネタ的長さになってしまいました…が、お気に召していただけたら幸いです。
もう一短編くらい続きができたら…いいな。
では、文若さん×花ちゃんです。
小ネタ的長さになってしまいました…が、お気に召していただけたら幸いです。
もう一短編くらい続きができたら…いいな。
では、文若さん×花ちゃんです。
元譲は向こうから歩いてくる文若を見付けた。
彼にとってはまったくの偶然であるが、彼のあるじである孟徳は狙って来たようだ。回廊に立ちはだかり、にたりと笑みを浮かべている。
だいたい、うさんくさかったのだ。
真面目な顔で簡を見ながら、この案件は如何なものかと滔々と元譲に語ったあげく、さらりと執務室を出た。元譲が口を挟む余地もなかった。
文若は、孟徳の顔を見て足を止めた。元譲にすら分かる、ぎくりとした表情だった。
「よう、文若」
明るい声に、彼は気を取り直したのかいつも通り、さらりと礼を取った。
「このようなところでお会いするとは、何か間違いでもございましょうか。」
「うん、これ」
孟徳は簡をひらりと振った。文若がそれを目で追うと、孟徳はぴたりと手を止めた。
「文若」
「はい?」
「この先は花ちゃんの部屋があると思ったけど。今日、彼女おやすみだったよねえ。なんで居るの?」
文若の瞬きが早くなった。
「…お気遣いなく」
「気になる。」
相手の言葉をざっくり斬り、孟徳は笑いを深くした。
「他でもない可愛い花ちゃんのことだしね!」
文若の肩が動いた。その様子を見て孟徳の笑みが深くなる。獲物を見付けた猫のような顔だ、と元譲はうんざりしながら思った。
「花ちゃんのご機嫌損ねたんだ。」
文若が途端に目尻を紅くした。元譲はため息をついた。分かっていて聞いているのがたちが悪い。
「あっれー、図星ぃ?」
「存じません」
「女の子の機嫌を損ねちゃうなんて駄目だなー文若は。仲直りにいちばんいいことなんて、教えてやらないぞ」
教えてくれと言うはずもなかろう。元譲は孟徳を止めようと口を開き掛けたが、それより前に文若がきりりと孟徳を見返した。
「結構です。花には花だけのやり方があると思いますので」
孟徳は一瞬ぽかんとしたあと、くるりと後ろを向いた。肩が揺れている。
「孟徳」
元譲が気の毒そうな目を文若に向け、もう一度、ごくごく低い声で孟徳、と呼んだ。彼は笑い止めずに、よろけながら執務室へ歩き出した。孟徳がすれ違いざまに文若の肩を叩くと、文若が慌てて振り返る。
「丞相、先程の簡はいかがなさるのです」
「お前に会いに来る口実だから、どうでもいい」
文若の眉間の皺が深くなり、袖の中で拳を握ったのが分かった。元譲が気の毒そうな顔をしているのが分かったのだろう、深く息をつき、目礼する。後ろ姿の肩が心なしか怒って見える。
元譲は小走りに孟徳に追いついた。
「…本当にあれを言うためだけに出て来たのか」
「勿論」
答えた声が隠しようもなく楽しげで、元譲は目を細めた。
「何であれ、花ちゃんが泣くような真似をしたら黙ってられる訳ないだろ~? なあ」
「何故、泣いたと言える」
「文若が走ってるのが窓の隙間から見えたから。あいつが走るっていう非常事態なのに俺の部屋に来ないなんて、あとは花ちゃんが原因としか考えられない」
「短絡的だ」
「当たっただろうが」
孟徳は、簡を無造作に袂に入れた。
「明日が楽しみだな~」
「…悪趣味だ」
元譲の渋い声を聞かぬ様子で、孟徳は詩を口ずさみながら歩いている。若い娘が謳うのがふさわしい浮き浮きとした歌が似合う背中が、元譲にもう一度ため息をつかせた。
(2010.8.16)
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