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二次創作。はじめての方はat first はじめに をご一読ください。
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 これから休日出勤にいってまいりますです。
 さむいです。
 
 数々のコメント、ありがとうございます。
 ただいま、仕事ほうの入稿を控えておりまして落ち着きません…なんとか合間を見ておへんじさせていただきます。ごめんなさい。
 
 
 では、文若さんと花ちゃんです。
 某、年間予約特典が到着してうれしくてうれしくて。
 
 

 
 


 
 
 文若はゆっくりと茶の香りを味わっていた。
 香りを楽しむ遊びというものが花の世界には存在するらしい。材料はよく分からないが、みなでひとところに集まり、香りを「聞いて」(面白い表現だと文若は思った)、何番目と何番目の香りが同じか、当てるのだそうだ。優雅な、そして豪奢な遊びだ。
 「あちら」はとても興味深い。しかしあまり詳しく聞きたくはならない。花が遠い目をするのは嫌だ。寂しそうにするのは嫌だ。そんな仕草のあとで、まるで文若を確かめるかのように抱きついたりしてくるのはいい。そんなことで埋まるならいくらでも背でも腕でも貸そう。
 外は激しい雨で、部屋の中も薄暗い。夕方になれば、近隣に川や田畑の様子を見に行った官から報告が入って忙しくなる。だが、花が嬉しそうに砂糖を絡めた菓子を食べているこの時間くらい、恋人の笑顔ばかり考えてもいいに違いない。
 花は指まできれいに舐めて、文若のほうをにこりと見た。
 「子どものような真似をするな」
 「お砂糖って貴重品だって聞いたら、つい」
 首を竦める彼女に短い息を吐く。これを丞相の前でもやり、その指を食べちゃいたいなあと、まんざら冗談でもなさそうな表情で手を取られていたことを思い出し、不愉快になる。もっとも、花はその言葉に、余っていた砂糖菓子をぽんと孟徳の唇に当てて笑っていたが。
 (あれはどこまで分かっているのか)
 そういう動作を見るたびに、眉間に皺が寄る。
 ふいに、花が真剣な顔をして文若を見た。
 「…なんだ?」
 「動かないでください」
 妙に厳かに花が言うので、杯を置くわけにもいかず、文若は静止した。花がそうっと立ち上がり、彼の側に立つと中腰になって両の頬をそのてのひらではさんで顔を近づける。菓子の甘い匂いより、その近づいた目に狼狽する。
 「は、花」
 「動かないでください!」
 滅多に聞かない、低くぴしりとした声で言われてまた肩に力が入る。
 そこで、目の前の花がぱあっと破顔した。
 「やっぱり! 文若さんって、目は細くないですよ!」
 「…は?」
 花は唐突に文若の両頬を放して立ち上がり、胸の前で手を握り合わせた。
 「孟徳さんの目が大きいんです。文若さんの目は普通です!」
 大発見、と目を輝かせて言う花に、文若はどっと疲れが押し寄せたような気がした。
 「それが、発見か」
 「はい! 今度、孟徳さんに会ったら言います。文若さんの目は普通だって!」
 わくわくした様子で彼を見る花に、眉間に皺が寄る。
 「言わなくてよい」
 「ええー!? せっかく発見したのに!」
 「丞相の目は広く天下を見るために大きいのだ。わたしの目はそれが取りこぼしたものを探すために細い。…と、昔、丞相が仰っていた」
 遠い、遠い昔だ。
 ここまで自分が高い位に上がることなど想像もしない昔、ただ夢だけでいくらでも語り合えた頃。
 花は、独白のような文若の言葉に瞬きし、また笑った。先程よりも柔らかく、優しい笑みだった。
 「孟徳さんって文若さんのことが昔から大事なんですね。嬉しい」
 立ち上がり、笑み崩れる花を抱きしめる。未だこういう動作に慣れない自分たちの間には、少し隙間があるけれど。
 「いつか、文若さんが万が一取りこぼすものを拾ってあげられるようになりますから!」
 胸の中で嬉しそうに告げる彼女に、気づかれぬようにため息をつく。その大きな目が、自分にとって新しいものを見付けていると言うのに、そのうす紅の柔らかい唇がやさしいものを告げてくれるというのに。その唇を重ねると、砂糖は妙に艶めかしい味になるというのも、最近分かったことだ。
 期待している、と厳かに告げれば、幼い恋人は文若を見つめて幸せそうに笑った。
 
 
 
(2010.12.4)
 

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