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グッズの写○録、とかいうブロマイドを2箱買ったのですが、三分の一が師匠でした。ワタシだけですか?最後には、あのにこ目がより猫目に見えてきたですよ。糸目さんと細目さんは仲良く2枚づつでした。
今日は、マボロシじゃない方の 文若さんと花ちゃんです。
「お帰りなさい、文若さん」
彼の足音を聞きつけたのだろう、扉からひょいと顔を出した花が笑った。ああ、と素っ気なく返すと、より彼女の笑みが深くなった。椅子に腰を下ろすと、首を傾げた花が前に立つ。いつもなら、彼を出迎えたあとは自分の机に戻る彼女の行動に、文若は片眉を上げた。
「どうした」
「文若さん、袖に何か入ってますよ?」
その声に、適当に誤魔化そうとした彼は、気を変えた。先程、若い官たちから取り上げた小壺を机に置く。
「惚れ薬、だそうだ」
「ええ?」
花が目を丸くする。彼はため息をついた。
「回廊の隅で、何やら騒いでいたので叱責すればこの始末だ。執務中にこのようなものをやりとりし浮かれているとは、緩んでいることはなはだしい。」
その際に、令君があんな可愛い子とご一緒に仕事をなさるからつい欲も出ると愚痴っぽく訴えられたことは伏せておく。だいたい、恋仲にしようと思って側に置いていたわけではない。
小腰をかがめしげしげと壺を見ている花に、文若は眉間の皺を深くした。
「お前も興味があるのか」
花は腰を伸ばしたが、視線は壺から逸らさない。
「本物なんでしょうか…?」
「本物だろうがそうで無かろうが、お前には関係あるまい」
思わず声が尖る。自分と花は既に恋仲のはずで、惚れ薬などは必要ない。花は恥ずかしそうに笑ってから、小首を傾げた。
「関係ないんですけど、やっぱり気になるじゃないですか。」
「そういう、ものか」
「あ、本当の本当に、わたしは要らないですよ? でも、こういうものって、いつの時代にもあるんだなあって。わたしの世界には、異性を引きつける香水とかが開発されてて、それを付けてる男子もいました。」
笑いながら言う花を見上げる。
「…お前はその男を、魅力的だと思ったのか?」
「え? いいえ、全然。」
朗らかな答えに脱力する。彼女がふいに語る、過去であり未来でもある世界は彼女の記憶の中で磨がれていくようだ。なにもかも柔らかいと思えるのは、彼女を見る目が変わっただけではあるまい。
「効かないんだねーって友達と笑いました。」
「…それは良かった」
花が少し首を傾げ、何か思い出すような目をした。
「このあいだ、孟徳さんが」
また、油断ならぬ人物の名が出た。
「…丞相がなんだ」
「この香りは女の子がくらくらきちゃう香りなんだよ、ってわたしに袖を持たせてくれたんです。黒い色の衣なのに少し甘くて、いつもの孟徳さんの紅い衣を思わせるような強い香りで、大人のひとって感じがしました。わたしにはちょっと違う意味で目眩がしちゃうくらい強く焚きしめてあって。確かに、とっても高価な感じは分かりましたけど、わたしには、その、文若さんの匂いのほうが好きですし…ああいう香りよりはずっと落ち着くから」
最後はやっと聞き取れるほど小さくなった声を理解すると、彼の耳がかっと熱くなった。
恋文をねだってきて、了承すれば飛び跳ねて喜ぶ。彼女の作った菓子を持ってきて、自分が悪くないと言えば子どものように笑う。…かと言えば、これだ。
抱きしめ、口づけ、それ以上を婚儀まで待てばいいのかそれとも自分はもう待てないのか、それさえあやふやになる。以前の自分ならば婚儀前に不埒なことは一切ならぬと考えていたはずなのに、この娘と肌を重ねたらどうなるだろう、とたびたび思う己が不可解だ。
彼は己の顔の熱さに我に返った。これでは、惚れ薬にうつつを抜かしていた者どもと変わらない。彼は努めて謹厳な声を出した。
「花。あちらの机の上のものから仕分けしてくれ」
ほんのり紅い頬のまま、花が頷いて背を向ける。その袂がひらひら動くのを、彼はしばらく見ていた。
彼女が語る世界の品物のように、茶器を取り上げる小さな手を、風に遊ばれる髪を、花を摘む指先をいちいち写し撮っておけるならばこの想いも少しは落ち着くだろうか。
なおさら離れられなくなる気がする、と文若は苦笑して筆を取り上げた。
(2010.10.8)
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