二次創作。はじめての方はat first はじめに をご一読ください。
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細目さんは、同僚として居てほしいです。
そして、花ちゃんといちゃいちゃしているのを横目で見ていたいです。
そして、花ちゃんといちゃいちゃしているのを横目で見ていたいです。
窓の外で、鳥が鳴いた。花は思わず筆を止め、目を細めた。
「きれいな声」
呟くと、とん、と机を叩く音が聞こえる。慌てて見ると、文若が筆を置いていた。花をちらりと見る。
「…茶にしよう」
「ご、ごめんなさい文若さん…」
何も言わず、文若は卓上の鈴を鳴らした。茶を入れようとしていた花は、中腰で止まった。いつも休憩の時に茶を入れるのは彼女の役目、のはず。
「文若、さん?」
伺うように言うと、文若は唇の端だけで微笑んだ。
「疲れているのだろう、そのままにしていなさい」
文若が、現れた侍女に素早く指示を出した。花は椅子から離れ、文若の側へおずおずと寄った。さっきの笑みがあったから、呆れたり怒ったりしている訳ではないと思うが、とかく分かりにくいのがこのひとだ。
「すみません。」
軽く頭を下げると、手に手をさらりと重ねられた。このひとは表情も変えずにこういうことをする、と、花は頬を紅くして思った。
「昨日は遅くまでがんばっていたからな。」
「仲がいいねえ~」
「ひゃあっ」
花は飛び上がった。振り向くと、窓からこの国の丞相がへらりと笑って顔を覗かせている。中学生のような態度に、彼女は笑っていいのか困っていいのか分からなくなった。
「孟徳さん…」
「丞相! そのようなところから!」
ぴしり、と声が飛んだ。孟徳さんってわたしよりスッゴイ年上だよね、と思わず彼女が自問自答してしまうくらい邪気のない笑顔で、彼は文若を無視した。
「ねえ花ちゃん」
文若のほうを見もせずに、孟徳はにこにこと続ける。
「あの鳥はね、この窓の外の木に巣を作ってるんだよ。」
「そうなんですか?」
花は小走りに窓に近づいた。
「うん。見に行く? 可愛いんだよー雛がいてね」
ごく自然な動作で手を取られ、花は瞬きした。
「孟徳、さん…あの、手を…」
「何かなー?」
何故か、笑顔が怖い。花は必死で声を絞り出した。
「手を、放して、貰えないでしょうか」
「どうして?」
「文若さんの前ですので…」
うふふ、と孟徳は、花の目の錯覚でなければ、非常に可愛らしく笑った。
「花ちゃん、かっわいいー」
さらりと手が離れる。花はほっとして、いつの間にかすぐ後ろに立っていた文若を振り返った。彼の眉間の皺はさぞかし酷かろうと思ったのだが、文若は窓にへばりつく彼の上司を平然と見下ろしていた。
「丞相。仕事にお戻り下さい。」
「文若ってば焦らないんだーつまんないなー」
孟徳は唇を尖らせた。そのとき文若は、花の見間違えでなければ僅かに胸を張った。
「その鳥を見つけたのはわたしですので、わたしが責任を持って彼女を連れて行きます。」
「文若さんが…鳥を?」
思わず声を上げてしまい、花は慌てて口を押さえた。思い切り睨まれる。
「…なんだその声は」
「え、いや、ちょっと…」
「似合わないよねーあはは」
花が言いよどんだことを、孟徳はさらりと言って立ち上がった。そして、花の頭を軽く撫でた。
「文若と同じ調子で仕事しちゃ駄目だよ? 君は可愛い女の子なんだからね」
「大丈夫です、文若さんはちゃんと気を遣ってくれますから」
「丞相さえきちんと仕事をしてくださったら夜更かしもせずに済むのですが」
「はいはーい」
ひらひら手を振って、孟徳が去っていく。文若の深い深いため息に、花は苦笑して彼を見上げた。
「孟徳さんって面白いですね」
文若は額に手を当て、花を横目で見た。
「お前がおもしろがるから、丞相も構う」
「すみません…」
「いや…」
文若は、さっき孟徳に取られていたほうの彼女の手をついと撫で、窓に寄った。
「…文若さん」
「なんだ」
「どうして、その鳥を気にしたんですか? このあたりでは珍しいんですか?」
文若は花から少し顔をそらした。
「うるさく鳴いていたからだ」
「それだけ…?」
侍女が入ってきて、茶の準備をし始める。それに向き直りながら、文若は言った。
「羽の色も美しい」
「はい」
窓から、茶が用意してある卓までは数えるような歩数もない。急に立ち止まった文若の背に、花は思い切りつっこんで顔を押さえた。
「す、すみません」
「美しいから、お前が見たいだろうと思ったのだ」
花はきょとんとし、それから文若の後ろ姿に勢いよく抱きついた。
「な、何だ!」
「振り返らないでください!」
「う、ん?」
「いいから、振り返らないでください…」
酷い顔してますから、と囁くと、耳まで紅い文若は、無言で頷いた。
そしてふたりは、茶が冷めるまでそのまま立ちつくすという奇妙な休憩を過ごしたのだった。
(2010.4.12)
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