二次創作。はじめての方はat first はじめに をご一読ください。
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VSものとしたほうがいいのか、オールキャラにしたほうがいいのか悩みつつではありますが、とりあえずカテゴリはオールキャラにしてみました。
これが魏さんちや呉さんちだったらどうなるのかなーと思いつつ、今回は蜀さんちの風景です。
これが魏さんちや呉さんちだったらどうなるのかなーと思いつつ、今回は蜀さんちの風景です。
中庭には暖かい日が照り、茶の良い香りがたちのぼる。芙蓉は深く息を吸った。
「ああ、いい気持ち。」
「雨の後だから余計だね。」
隣に座った花が笑うと、身にまとう艶やかな深い紺地に西域の唐草を織りだした衣に、日差しが滑ってきらきらとする。
最初はあちらの不思議な服ばかり着ていた花だが、さすがに洗濯もしなければいけないから、そういう時にはこちらの衣も着ている。だが、緩やかな女性らしい動きにはほど遠く、時には書簡を持って回廊を走り雲長に注意されている。
「玄徳さんがくれたんだよ。」
「え?」
「この服。何だか最近、玄徳さんはよく服をくれるの。」
目尻を下げて困った顔をつくる花は、自分の衣を見下ろした。
「でも、似合ってるわよ。可愛いじゃない」
「そうかなあ。師匠からは、弟子の分際で派手って言われたよ? だいたい、まだボクの手伝いもろくにできないのに、衣ばかりきれいになって下手に目立って何か失敗した時に困るんじゃない、だって。」
「あらあ」
芙蓉は大げさに声を上げた。どうせ孔明は、玄徳が花をかまうのが面白くないだけだ。花はどちらの気持ちも気づいていないだろうし、素直に玄徳の厚意として受け取り着ているだけだろうが。
ただ、これはちょっと面白い。以前も、花を少し着飾らせただけで彼らの目の色が変わったのを芙蓉は見逃していない。
「女の子はね、着飾れば着飾るだけ可愛くなるものよ。玄徳さまだってそれをご存じだから花に衣を贈るのよ。」
花は困ったように目を伏せ、紅くなった。
「でも、師匠が…」
「それなら、孔明どのにもおねだりしてみなさいよ。」
「…それはもう言った…」
肩を縮める花に、芙蓉は詰め寄った。
「言ったの!? なんて?」
「そんなに言うんだったら、師匠は動きやすい、弟子らしい服をください、って。そうしたら、すっごい盛大にため息をつかれた。キミってホントに分かってないね、から始まって、ずうっと小言を言われたよ。だいたい、男子が女性に衣を贈るってどういうことだが知ってる? って。ねえ芙蓉姫、どういうこと?」
そこから教えなければならないのか。芙蓉は頬を引きつらせた。ここで下手に玄徳に聞いてみろ、などと言ったらどうなるだろう。孔明に嫌みを言われるだけで済むだろうか。…だがしかし、乗りかかった船、という言葉もある。
「まあ普通は、恋人同士で贈り合うものかしら。」
「ええ!?」
花が慌てて立ち上がった。衣をせわしなくはたく。
「こ、困るよ。玄徳さん、そういうつもりなのかな?」
「あら、花は玄徳さまが嫌い?」
「嫌いとか好きとかじゃないよ、尊敬してるし感謝もしてるけど…その、恋とか、そんなんじゃないし…」
花は気絶しそうなくらい紅くなり、あわあわと口を開いたり閉じたりしている。芙蓉は卓に頬杖をついてそれを横目で見上げた。
「げ、玄徳さんがそういうつもりなら返さないと」
「花ったら、失礼よ。まあ、玄徳さまはこの軍のあるじでいらっしゃるのだし、部下の面倒を見るのは当たり前、というお方だわ。そういうつもりで頂戴しておきなさいな。」
「そ、そう思って大丈夫? 玄徳さんに失礼じゃないよね?」
「勿論。」
「あ、でも、それで師匠の前に出るのはよしたほうがいいのかなあ、また小言を言われちゃう。ああでも、それじゃ仕事できない~」
情けない声を上げて卓に突っ伏す花の頭を、芙蓉はよしよしと撫でた。本当に純な子だ。
「じゃあ花、今度ふたりで城下に出て見ましょうよ。花があちらの服を着られない時に着るものを、わたしが見てあげる。それを着ていたらどちらにも不義理はしないんじゃないかしら。」
「本当? 嬉しい!」
花は、本当に救われた、とばかりの笑顔を見せて芙蓉の両手を掴んだ。それに微笑み返しながら、いったい玄徳や孔明はこの案を迷惑と思うだろうか、幸いと思うだろうか、悩んでいた。
「孔明。」
「何ですか、我が君。」
「最近、花がたまに着ている衣なんだが…」
「ああ、可愛いですね。色も布地も、彼女によく似合っています。」
「…お前が贈ったのか」
「いいえ? 芙蓉姫とふたりで城下に買い物に行ったらしいですよ。まあわたしは、弟子に相談を受けたので似合う色を助言はしました、が。」
「…ほう」
「本当によく似合っていますよね。…ところで我が君。弟子が最近、色も珍しくずいぶん手の込んだ細工の愛らしい帯飾りをしているのですが、どちらで求めたものかご存じですか?」
「俺が贈った。」
「ほほーう、なるほど。」
「もとは衣を贈っていたのだが、あまり立派なものだと気後れがすると最近、着てくれなくなってなあ。芙蓉に相談したら、身につけるものはいかがでしょうと言われたので、選んだのだ。」
「そうですねえ、少し大人っぽいような気はしますが」
「まあ、あの衣は子どもっぽいような気がするがなあ」
「………」
「………」
「ふふふふ。」
「はははは。」
(2010.4.22)
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