二次創作。はじめての方はat first はじめに をご一読ください。
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めりくりな更新でなくてすみませぬ~!
さらに、毎日できそうにないのもすみませぬ。
こういうぱられるもフトコロ広く受け入れてくださる皆様に大感謝、です!
では、ちっちゃい公瑾さんと花ちゃん、です。
さらに、毎日できそうにないのもすみませぬ。
こういうぱられるもフトコロ広く受け入れてくださる皆様に大感謝、です!
では、ちっちゃい公瑾さんと花ちゃん、です。
彼はふっと目を覚ました。無意識に手を伸ばし、冷えた上着に触れてびくりと手を引く。彼は急いで顔を上げた。部屋はしんとして、午後の日差しが柔らかく窓から差し込んでいた。
…誰も、いない。
昨日から側に居る、困ったような優しい笑顔のひとが居ない。
母も父もいない「ここ」は、恐ろしいところだと思う。でも、あの女の人が居てくれるからなんとかそれ以上、泣かずにいられる。あのひとの声も手も、とても気持ちがいい。
「…はな」
公瑾は急いで寝床から下りた。扉を開けたが、回廊には涼しい風が吹き抜けるだけで誰も居ない。彼はそのまま庭に下りた。
知らない庭、でもあのひとが好きだと言っていた庭。猫は確かに来なくて、彼は庭を見る時間が増えた。花が咲いているのを見付けて教えると、ありがとうと笑ってくれる。
小さな流れに渡された石橋を駆け、角を曲がる。途端に景色は一変して彼は足を止めた。
そういえば、あのひとと出会ってから、あのひと無しで庭や部屋から外に出たことはない。怖いからだ。あのひとと一緒ならば外に出られるのはなぜだろうと考えるいとまもなく、彼の上に影がさした。彼が顔を上げるより早く、ぐっと脇の下に手を入れて躰を持ち上げられる。
「あれ? こんなちびっこ、この屋敷にいたっけ?」
目をまん丸にして見返せば、興味深そうな悪戯っぽい光が踊る瞳に出会った。整った顔立ちだったが、身動きできない怖さのほうが先に立って、公瑾は息もできないでいた。
「なーんかお前、都督に似てるな。隠し子か?」
「は、はなして、ください」
「一大事だな」
ぐいと曲げた唇は楽しそうな笑みを刻んだ。
「伯言さん!」
もうちょっとで泣く、というところでまっすぐに飛んできた声に、公瑾は急いで顔を上げた。柔らかい腕が自分を巻き取り、圧迫感が消える。
「小さい子になにをするんですか」
咎める声に、公瑾は彼女の襟元に顔を埋めた。
…来てくれた。来てくれた。
「花殿、その子は誰です?」
「公瑾さんの遠い親戚です。遊びに来てるんです」
へえ、と男が感心した声を出した。
「都督の隠し子かと」
「変なこと言わないでください、もう」
「謝ります、怒らないでください。…しかし花殿、都督はずいぶんお悪いのですか?」
その言葉に、彼女の胸が早い鼓動を刻み始めたのが分かった。彼はそろそろと顔を上げて彼女の横顔を見た。
彼女は、描いた絵のように白い顔をしていた。目を伏せて言う。
「伯言さんが心配していたと伝えます」
「いやあ、こっちの心配なんて都督も気持ち悪いって言うでしょうから伝えなくていいんですけどね。あのひとが出仕してこないなんてよっぽどでしょう。いつぞやは熱がおありなのに、構わず出仕してきてましたから。」
腕が、柔らかそうな口元が強ばる。眼差しが暗くなる。それを男も見たのか、慌てて礼を取った。失礼します、と口調だけは慇懃なまま、自分に興味深い視線を向けて去っていった。
「…はな」
そっと呼ぶと、彼女はこちらを向いた。
「怖かったでしょう。伯言さんったら、乱暴なんだから」
白い手が甘やかに髪を撫でた。公瑾はもういちど、彼女の首に顔を埋めた。彼女が耳元で笑った。
「ごめんね、ひとりにして。もう大丈夫だよ。」
彼は柔らかい肌に顔を埋めたまま目を見開いた。
母上も父上も、自分をひとりにしておく。周の跡取りだから強くあらねばならぬと、二言目には言う。このひとは、違う。
公瑾は強く抱きついた。
「…こわかった」
「ごめんね。もうひとりにしないから」
「ほんとう、ですか」
「本当だよ。公瑾くんに嘘はつかない。」
明快に彼女は言った。
…こんなひとは今まで居なかった。ここには母も父もいないけれど、このひとがいる。
「はな」
「なあに?」
はな、はなと繰り返して呼ぶと、可笑しそうに彼女は笑った。
「どうしたの」
あなたが笑うのが嬉しいと言えるほど、彼は語彙を知らない。ただ抱きついて、同じように強い力が返ることに、躰が温かくなった。
(続。)
(2010.12.24)
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