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二次創作。はじめての方はat first はじめに をご一読ください。
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 第二次入稿の波に洗われて抜け殻になってます。
 そのせいか、珍妙なものを思いました。
 本当は何処かで更新すべきなのかもしれませんが。
 
 
 ちっちゃくなった公瑾さんと花ちゃんのお話、という特殊なお話ですので、お嫌いな方は閲覧なさらないでくださいね。
 (同日21時、若干の追加をしました。前に見て下さった方、ごめんなさい。うっかりであります。)
 
 
 
 
 


 目を覚ました時、目の前にあったのは柔らかい白い胸だった。甘い匂いがする、とそれに頬ずりしかけて、公瑾ははっと目を覚ました。
 母は自分を抱いて寝たりしない。身の回りの世話をしてくれていた娘は先日嫁ぎ、次の世話係が見つかるまで老齢の寡黙な侍女がその役についている。彼はおそるおそる顔を上げた。
 若い娘が穏やかに眠っていた。
 白い滑らかな夜着は、寝ているあいだにはだけたのか、白い胸が半分見えている。寝顔はあどけないが、自分よりずいぶん年上だろう。髪は明るい茶色で、中途半端な長さでうなじにほつれていた。
 …誰だ。
 ここは、どこだ。
 慌てて回りを見回そうと躰をよじると、娘のうなり声がした。
 「もう、朝ですか…?」
 寝ぼけた声に、公瑾は完全に固まった。後ろから滑らかな腕で抱きしめられる。髪に頬ずりされるに及んで、公瑾は暴れた。
 「だ、だれですかあなたは!」
 「んー? …あれ?」
 さすがに、娘も気づいてくれたようだ。くるりと躰を返され、視界が揺れる。
 「…きみ、誰?」
 「わたしが、聞きたいです」
 精一杯睨んで言うと、娘はしげしげと自分を見つめ、次の瞬間、自分の頬をちょん、とつついた。
 「なにをするのです!」
 「やわらかーい。…っていうかきみ、公瑾さんに似てるね?」
 「公瑾はわたしです!」
 彼は必死に言った。娘の目がこれ以上ないというほど、丸くなった。
 
 
 
一日目
 
 
 
 花は、手を繋いだ男子を見下ろした。足取りがおぼつかない「彼」は、花の手と裳を一緒に握りしめ、落ち着かない様子で庭を見回しながら歩いている。
 「公瑾くん」
 花が呼びかけると、「彼」がぱっと顔を上げた。
 「どうしたの?」
 彼はうろうろと視線を彷徨わせていたが、ふ、と唇を歪めた。
 「おにわが、ちがいます」
 「庭?」
 「ここは、みたことがありません」
 しゃがんで、唇をきつく噛んで泣くのを堪えているらしい彼と目線を合わせる。
 「嫌いな庭かな?」
 彼はちょっと目を見張り、ちいさく首を振った。花は微笑んだ。
 「そっか、良かった。」
 「…あなたは、このおにわが好きなのですか」
 おそるおそる投げかけられた言葉に、花は頷いた。
 「大好き。わたしの大事なひとが作ってくれた庭なの。」
 「だから…?」
 「うん。」
 小さい、柔らかい手が花の手をきつく握った。
 「水がながれています」
 「そうだね。」
 「さかなはいますか」
 「魚はいないかな。猫がよく来るから」
 彼の背中がぴんと伸びた。花の裳をいっそうきつく握る。花は驚いて彼を見た。
 「…ねこはきらいです」
 「ひっかかれたことでもあるのかな?」
 小さい頭がこくん、と縦に振られた。
 「じゃあ、近づかないで、って言っておくね。」
 「ねこと、はなしができるのですか」
 期待に目を輝かせて見上げてくる瞳に花は苦笑して、そうっと小さな体に腕を回した。その躰は一瞬強ばったが、おずおずと花の首に手を回してきた。幼児の匂いがする。よいしょ、と抱き上げると、抱きつく力はいっそう強くなった。
 「ほら、庭がよく見える」
 花が促すと、頭を巡らせて彼は庭をしげしげと見回していた。
 「…花がさいています」
 「うん。いい匂いがするね」
 花を見返った彼は、少しだけ、笑った。
 夫である公瑾が幼児になっているのを見付けたのは、今朝だ。目覚めたら寝床の中で「彼」が震えていた。
 家に古くからつとめる侍女に確認したところ、涙ぐまんばかりに「確かにお小さい頃…そう、三つくらいでしょうか、その頃の若様にうり二つでいらっしゃいます」と言われた。その瞬間の、脱力する感覚は忘れられない。しかし、「彼」が先に泣き出したので、どうやら自分を取り戻すことができた。原因が分からないのでどうにもできず、花も彼も家に籠もっている。
 幼い「公瑾」はいま、小さい手を蝶に伸ばしている。ふだん、幼い幼いとため息をつかれる自分の仕草を彼がしているのを見て、花は微笑んだ。
 
 
 
(続。) 
(2010.12.23)

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