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二次創作。はじめての方はat first はじめに をご一読ください。
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 公瑾さんと花ちゃんです。
 
 

 
 
 
 「なにしてるのー?」
 「お姉ちゃん」
 小喬が振り向いて笑った。
 「花ちゃんにあげる花の様子を見てたの。」
 城の花壇の一角を例のねだり口調で手に入れた小喬は、山から摘んできた花を植えた。そこでは、白い花が今にも咲きこぼれそうに蕾を大きくしている。既に香りはあたりに漂いはじめていた。きつすぎず、健やかな香りだ。 
 「いい匂い」
 「うん」
 「これなら、花ちゃんも喜んでくれるね」
 「そうだね」
 姉妹は、花をせき立てるようにして異国の花嫁の話を聞いた。長く裾を引く白い衣に色とりどりの花束を持ち、誓いを述べる形式。白い体にぴったりした衣を着て、平たい杯で酒を三度飲む形式。花はそれを、自分のことのように話す。彼女の世界では絵が豊富で、実際に見たことのないものでも自分のことのように知ることができるのだと言う。どちらにしても、姉妹にとっても婚儀は興味をひくものであった。
 「白い衣はちょっと使えないからね」
 「公瑾、聞く耳もたなかったもんね」
 白は喪の色だから、公瑾が見向きもしなかったのも分かる。
 「でも花くらいはいいよね」
 「花ちゃんの待ってるお部屋に飾ってあげようよ」
 「うん」
 大喬は蕾の先を軽くつついた。ゆらん、と長い茎がしなった。
 「公瑾の婚儀かあ」
 小喬がぽつんと言った。彼女の横顔は静かだった。
 「あのときはあのままわたしたち、時間が止まってしまうと思った」
 「公瑾だって、歩いているのに死んでた」
 「でもまた生きてたね」
 「トシ取ったよ」
 「公瑾が花ちゃんを迎えたみたいに、あたしたちも誰かのところに行くんだね」
 大喬は空を見た。死んだ男が好きでたまらなかったこの土地の蒼い空。幼い恋が焼きついた空。
 「はーくふー!」
 声は空に吸い込まれていく。呆気にとられて姉の背を見ていた小喬が、すぐに両手を上げた。
 「伯符ー!」
 叫べば伯符はいつも聞いていて、ちゃんと姉妹がどこにいるか知っていた。
 いつの間にか、その声はただの叫びになっていた。好きになった花、大事になった人物、乗り越えた苦手な食べ物。
 息を切らして座り込んだふたりの後ろで、足音が止まった。小喬が振り返って笑った。
 「公瑾」
 いつもの、表情の見えない微笑を浮かべた彼が立っていた。
 「突拍子もないことをするのは慎みなさい。侍女たちが怯えています」
 気が済んだか、とも、なぜこんなことを、とも彼は聞かなかった。
 「公瑾もすればー?」
 「冗談でしょう」
 「花ちゃーーん、って叫べばいいじゃない」
 「そうだよ、きっと花ちゃん喜ぶよー」
 「喜びません」
 心持ち胸を反らした公瑾が、ふたりを見下ろす。
 「あれは、耳元で囁かれるのが好きだそうです」
 姉妹は顔を見合わせた。
 「…ばかだねえ」
 「うん」
 「伯符ーぅ、公瑾が馬鹿になったー」
 「馬鹿だー」
 「いい加減になさい」
 溜息をつく彼に姉妹はまた顔を見合わせ、笑い出した。
 
 
 
(2010.11.17)

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