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二次創作。はじめての方はat first はじめに をご一読ください。
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 公瑾さんと花ちゃんの婚儀話、二日前です。
 
 
 (ところで、まったくの余談ではありますが。
 ワタシの育った地域は、二日前、当日、と数えます。
 ところが、二日前、前日、当日、と数える地域もあるのですよね。
 とりあえず今回は、友人に多かった 二日前、前日、当日、と数えます。)
 
 
 


 
 
 
 「仲謀」
 木の下から声がかかって、彼はうとうとしていた意識を引き上げた。返事がわりに梢を揺らせば、おかしそうな笑い声が上がる。
 「どうしたの、さぼり?」
 「ばか、休憩だ。…なんか用か」
 「ううん、散歩。」
 彼女とは、十日ほど前に公瑾とともに挨拶に来た時に会ったきりだ。仲謀は膝の上にだらしなく広がっていた兵法の簡を閉じ、木を下りた。濃い青の衣を着た花が、仲謀を見てにこにこしている。
 「ひとりで歩いてんのか」
 「だって、わたしも休憩だもん。」
 「お前いま、婚儀の準備で休暇中だろ?」
 「うん、だから、ながーい休憩。」
 けろりと言う彼女に、仲謀は肩を落とした。
 「…公瑾んとこに帰る時は送らせる」
 「ありがとう」
 首を竦めたところを見ると、彼女もひとり歩きのあとの騒ぎを分かって抜け出してきたらしい。仲謀は木に寄りかかった。
 「んで、どうしたんだよ。こんな奥庭、珍しいもんもないだろ」
 「だから見に来たんだよ。…わたしほら、公瑾さんの奥さんになるでしょ?」
 紅くなった花から微妙に目を逸らしながら仲謀は素っ気なく頷いてみせた。
 「その、奥さんになってから見たらいろいろ見方も変わるものなのかなあと思って、独身のうちに見て回ってるの。」
 仲謀は深く息をついた。これはかなり壮大な惚気だ。
 「…頑張れよ」
 「うん」
 また素直に返事しやがって、と思う。
 彼と年齢の近いこの娘と公瑾が正式に婚儀を挙げると報告に来たのは、ずいぶん前だ。それからのすったもんだを、仲謀は見ないふりをした。頼まれれば花の肩を持つ気はあったが、周家内部のことと見守っているうち、あさって、娘は公瑾の妻になる。
 そう思うと、何かむずがゆいような気恥ずかしいような気になる。尚香が嫁ぐのとはまた別だ。
 「もう、仲謀に馬に乗せて貰えないね」
 心底、残念そうに言う彼女に、そんなこともあったと仲謀は目を細めた。せがまれて遠駆けに行き、夕日も楽しんで戻れば、ふたりそろって正座させられる勢いで説教された。さすがに仲謀には遠慮がちであったが、花は山ほどの手習いを押し付けられしばらく部屋から出られず、公瑾の顔しか見せてもらえなかったと愚痴を言っていた。
 「…当たり前だろ。お前、公瑾が頼まれて別の女を鞍に乗せるのはいいのかよ」
 花は子どもっぽく唇を尖らせた。
 「…嫌、かも」
 「かも、じゃねえ。嫌だろ」
 「うん、嫌だ」
 「よし」
 「何よ、それ」
 花が笑う。
 変な娘、と繰り返し思う。自分が娶る娘もこういう笑い方をするといいと、彼はぼんやり思った。
 
 
 
(2010.11.19)
 

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