二次創作。はじめての方はat first はじめに をご一読ください。
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孟徳さんと花ちゃんで、ぴろーとーく、であります。
リクエストありがとうございました!
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汗で額に貼り付いた薄茶の髪をそっと掻き分けると、花が薄く目を開いた。
「気分はどう?」
囁くと、それが聞こえなかったかのようなぼんやりした瞳で孟徳を見つめている。小首を傾げてみせると、花は微笑んだ。まさにそれは明け方に開く花のように柔らかな、山の端に滲む朝日のようなほのかな微笑だった。
片手では足りぬ逢瀬は、瞬く間に花を変えた。幼い匂いのしていた肌は夜着の薄布に目眩するほど照り映え、強い衣ではその可憐さと色香が隠せないほどあやうく見えるようになった。唇は彼との行為を覚えてより濃く紅く色づいた。瞳は彼の指先の意図を読み取って淡く蕩けるようになった。肌を合わせる、というのはまさしくこういうことだ。彼がその「羽」を抜かぬよう斬らぬようそうしたいと思わぬよう、大軍を動かすときより慎重に、しかし耐えきれずに彼女にねだった結果、得たもののすべてに叫び出したいような歓喜を覚える。
経験から、女はもっと変わっていくのを知っている。しかし、別邸に集められた女たちのように変わって欲しいわけではない。我が儘と知っているが、そんなことばかりねだるのが自分だ。
「もうとくさん、だあ」
花がその笑顔のまま孟徳にすり寄ってくる。この落差も彼女の代え難い魅力だが、と彼は苦笑した。ふれあう肌は心地いいけれど、子犬に頬ずりする夢でも見ているのかと思い、孟徳は彼女の髪を撫でた。
彼女は、躰を重ねる時に孟徳が服を着ていると少し複雑そうな表情を浮かべるので彼は必ず脱いだ。手と同じく躰にも火傷の痕があるから、あまりさらしたくない。けれど、花がいつも痛ましそうに愛おしそうに撫でてくれるのでこれもいいかなと思っている。…花の傷を見るのは辛いけれど。
「はなちゃーん、起きてるのかな?」
花はゆっくり瞬きした。
「孟徳さん、ですよ…ね?」
「うん、そうだよ。」
「じゃあ間違いじゃないです」
花があんまり嬉しそうに笑うものだから、孟徳もつられてくすりと笑った。
「花ちゃんは可愛いねえ。…さっきまでが嘘みたい」
途端に、花の目の焦点が合った。耳まで紅くなる。
「も、孟徳さんはそうやっていつまでも言うから」
花は急にごそごそと動き出した。何かをさがしているらしいその手振りに、孟徳はすぐ思い当たったが、あえてのんびりと聞いた。
「どうしたの?」
花が俯く。
「…く」
「ん?」
「わたしのふく、どこでしょうか…?」
ああやっぱり、と孟徳は笑みをかみ殺した。彼女はすぐ躰を隠してしまおうとするので、夜着は寝台の下に押し込めたのだ。この指先に酔う躰に戯れながらそんなことができるのだから、自分もたいがいだと思う。
「いいじゃない、このままで」
裸の背を抱き寄せると、花が小さな悲鳴をあげて孟徳の胸を押し返した。
「孟徳さんもちゃんと着替えないと。風邪をひいちゃいます!」
「くっついて寝たらあったかいよ」
「そ、そんなことしてたら孟徳さんはまた…」
「また?」
花は目を逸らしたり口をあわあわと動かしたりしていたが、敷布に顔を埋めてしまった。隠れきらない小さな耳に唇を近づける。
「はーなーちゃぁん?」
「わたしが、ふくを、着ないと」
「うん」
「孟徳さんは、いつまでも触ってる、し」
「花ちゃんの肌が好きなんだ」
「放してくれないし」
「温かくて気持ちいいんだ」
「…そればっかり…」
「ねえ花ちゃん、お話しして?」
花が敷布から孟徳を盗み見るように見上げた。
「孟徳さん、こどもみたい」
「子どもでいい。花ちゃんの子どもにして」
もうこれしかない。白い柔らかな胸を好きなだけ独り占めして、膝の上で寝ていても誰も怒らない。手ずからご飯を食べさせてもらい、字を習って、手を繋いで市場に買い物に行くのだ。
浮き浮きとした思いを彼女に向けると、花は可笑しそうに孟徳を見た。
「じゃあ、わたしのご主人さまは文若さんがいいですね」
異国の言葉を聞いたように、孟徳は口を開けて固まった。
「だって、孟徳さんがわたしの子どもになるなら、結婚する相手が必要でしょう? ひとりでは子どもはできません。」
紅くなりながらも、楽しそうに花が言う。孟徳は徐々に、眉間に皺が寄っていくのが分かった。
「文若の…お嫁さん?」
「ええ」
「あの石頭の、細目の、まるで女の子の気持ちなんか分からない男のお嫁さん?」
「でも仕事はとてもできますし、まわりを見てくれるひとです。だから奥さんになるひとを大事にしてくれますよ、きっと」
朗らかに花が笑う。
「だめ! 花ちゃんに触っていいのは俺だけ!」
「じゃあ孟徳さんはわたしの好きなひと、でいいですよね?」
「当たり前だ!」
寝台に似合わない真剣な大声を出してしまったと自分にひるんだ途端、花が微笑んだ。
「良かった。」
声は本当に安心していた。白い腕が自分を抱き取り、白い胸に自分の息が当たる。
「わたしが好きなのは孟徳さんですから。他の人のところに行けなんて言われたら、ひっぱたくかもしれません」
…そんなもので済むはずがないのに。君は最後までひっそりと自分で考えようとする子で、でもとても情熱的だから、ひっぱたく、なんて可愛い手で済むものか。どんな手で来るかな、と想像してしまう自分は本当に仕方がないと思う。
「うん、俺も花ちゃんの好きな人がいいな」
「それだけにしてください」
「うん、分かった」
目を閉じて、彼女が微笑ったのを感じる。
彼女の躰に残る傷跡は決して消えない。けれど、まるでそこから新しい花が咲いたみたいだと思う自分はひっぱたかれるどころか、と孟徳はひっそりと自分を嘲笑った。
(2011.2.14)
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