二次創作。はじめての方はat first はじめに をご一読ください。
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☆ご注意ください☆
この「幻灯」カテゴリは、chickpea(恋戦記サーチさまより検索ください)のcicer様が書かれた、『花仲謀』という設定をお借りして書かせていただいているtextです。
掲載に許可をくださったcicer様、ありがとうございました。
『花仲謀』は、最初に落ちた場所が仲謀さんのところ・本は焼失・まったく同じループはない、という超々雑駁設計。 雑駁設定なのは のえる の所為です。
何をよんでもだいじょぶ! という方のみ、続きからどうぞ。リクエストありがとうございました。
この「幻灯」カテゴリは、chickpea(恋戦記サーチさまより検索ください)のcicer様が書かれた、『花仲謀』という設定をお借りして書かせていただいているtextです。
掲載に許可をくださったcicer様、ありがとうございました。
『花仲謀』は、最初に落ちた場所が仲謀さんのところ・本は焼失・まったく同じループはない、という超々雑駁設計。 雑駁設定なのは のえる の所為です。
何をよんでもだいじょぶ! という方のみ、続きからどうぞ。リクエストありがとうございました。
花はぼんやりと目を開けた。侍女が僅かな衣擦れに腰を浮かせ、花の枕元にやってくる。
「ご気分はいかがですか」
花はゆるく首を振った。いいとも悪いとも分からなかった。ただふわふわと、だるいような痛いような気持ちがする。瞬きした花に、侍女は低い声で言った。
「都督殿は、広間に詰めております。臣の方々もそちらに」
彼女は瞬きした。
そうだ、伯符は死んだ。太陽のような兄は死んだ。こぼれ落ちそうな目を潤ませ自分に縋って泣いていた尚香を思い出す。
「いもうとは」
「尚香さまは先日来、仲謀さまと同じように伏せっておいでになります。」
呼ばれた声に、花の身が震えた。そうか、自分は『仲謀』にまた巡ったのだ。彼女は手のひらを握った。このだるさはそのためだ。当然だ、あの本が消えたのだから。花は侍女を見た。
「起こしてください。それから、着替えを」
侍女は顔色を変えた。
「なりません。おからだがまだ」
「公瑾を呼んで」
断ち切るように言うと、扉のすぐ横にいたひとりの侍女が足早に出て行った。枕元の侍女が着替えを用意しに立ち上がる。花は顔を両手で覆った。人の気配がなくなったのを確認し、口元に手を寄せる。
「…ちゅう、ぼう」
あかるい髪、まっすぐな目、長い手足、不遜に笑う口元。
「ごめんね…全然似てない」
仲謀も、伯符が亡くなった時にそう思っただろう。でも伯符と仲謀より、仲謀と自分のほうが差がありすぎる。
でも、自分は「仲謀」だ。
あの身代わりの婚儀が終わって、そのあと。刺客の矢をきっかけに始まった騒動のなかで、自分の代わりに本が切りつけられた。その瞬間、すべてがずれたような感覚があった。そのあと船着き場で、尚香は、「兄上、わたしはこのまま行きます」と花に向かって言った。駆けつけてきた武将も口々に自分を仲謀様、と呼んだ。
これは守れたことになるのだろうかと、いまも皮肉に思う。兄に及ばないと言いつつ、誰よりも兄を思わせたその眼差しを自分は消した。何も、ない。これが、二度目の「悔恨」だ。侍女に身を拭ってもらい、黒い装束に袖を通しながら、花は息を整えた。
「周公瑾、参りました」
冷静な低い声に、身が震える。
「入って」
失礼いたします、という声と同時に、いっせいに部屋の帳が上げられ、窓が開けられる。そのせいで、彼は光を連れて入ってきたように見えた。彼を見ていると銀色の狼のようだ、と一度目に思ったことをまた思う。
「仲謀様、おかげんはよろしいのですか」
「そんなことを言っている場合じゃない」
公瑾は果たして、うっすらと笑った。彼の凄みは「一度目」でじゅうぶん分かったつもりなのに、こうして改めて対峙するとなお、心が冷える。
「公瑾。わたしが立ちます」
彼は「一度目」と同じく驚いたふうだった。花はゆっくり、寝台から出た。公瑾が急いで近寄ってくる。花は唇を噛んだ。
「止まりなさい」
公瑾がわずかに、怪訝そうに顔を歪める。
「わたしを生涯、あるじとして支える気があるなら進みなさい。もしそうでないなら、わたしと尚香を殺しあなたが揚州を背負いなさい。」
彼の細い眼が見開かれるのを心地よいと思った。
誰よりも強い「私心」で孫の繁栄を願うひと。誰よりもいま頽れていていいのに、それをしないひと。
…「一度目」に、揚州の民のため、その才がないと判断したわたしと尚香を幽閉したひと。
(伯符ではなく、わたしを見て)
そうしていたら、仲謀ももっと背を伸ばしていられた。「一度目」で、それがよく分かった。彼はこの大きなひとが側に残ったことで、余計に幻を見ざるを得なかった。彼が幻を見ているから、自分もそれを追わなくてはいけないと思ったのだ。あなたに、そんな真似はさせない。わたしと「仲謀」の邪魔はさせない。花は何をも見逃すまいと公瑾を見ていた。
美しい、美しい彼は、徐々に目を伏せた。そうして何事もなかったかのように歩み寄り、花の手を取った。
「…まだ、熱っぽい」
彼の声は艶さえ帯びていた。二度目でもまだこういうところは慣れないな、と花は心の隅で少し笑った。
「そうよ。だから助けて」
公瑾が目を上げ、花を見た。そして、微笑んだ。
「仲謀様に、忠誠を誓います」
「…では、広間へ行きましょう」
「はい」
公瑾が手を放す。
今度こそ、彼の夢を実現してあの手に、不器用だけれど熱く自分の手を取ってくれた彼にこの身を返せますように。誰に約束された訳でもないし、本の記述も知らない。けれどそれはいつからか確かな事実として彼女の中にある。
(待っててね、仲謀)
そして待っていてください、伯符。公瑾に裏切りなんかさせない。私心に目が眩ませたりしない。
せめて…この身を返す時、ちらっとでも仲謀に会えたらいいな。笑いかけた空がぼやけたことを、花は無視した。
(2011.2.9)
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