二次創作。はじめての方はat first はじめに をご一読ください。
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祭り三日目になります。
今日は(三)(四)の2編更新。なぜなら、計算を間違えたから! 5日分更新のところ、7編にしたから! …たぶん、「一週間」と「五日」をごっちゃにしたんです…あああ計算もできません…細目さんに見なかったふりをされるに違いない…
ワタシのケータイでは最近、「ぶ」と打つと「文若さん」が一番に出ます。当然、「も」と「じょ」が間違いなく「孟徳さん」「丞相」になります。「ほ」ですら、「細目さん」になりました。
では、(三)です。
家令に笑顔で手を振り、花は歩き出した。まだ未明と言っていい時刻だから、街は当然、暗い。揃いの外套の前をかき合わせる。
「足下に気をつけなさい」
毎朝、文若は言う。毎朝、花は、はいと微笑む。
この世界では、孟徳の前で行う朝議はとても早い。最初、なかなか起きられずに悪戦苦闘している花に、孟徳は、彼女は朝議に出る身分じゃないのだから遅れて来てもいい、とさえ言ったそうだ。
けれど、朝議が終わって官たちがそれぞれの部屋に散れば、一斉に仕事が始まる。文若が本当に忙しくなる前に簡単につまむものを用意したり、茶を淹れておいたりすることが、花の見つけた仕事のひとつだ。彼を待つそのふんわりした時間や、文若が花の作った食事をし茶を飲んでほっとした顔を見るのが好きだった。…たまに孟徳がやってきてその空気を賑やかにするが。
同じ方向に向かう官にときおり挨拶を返しながら、花は横を歩く夫を見上げた。すぐ気づいて、彼が見下ろしてくる。
「…今日は少し会議が長引くかもしれない」
「はい」
「このあいだ渡した詩文はもう読み終えたか?」
「あともう少しです。…あ、そうだ」
花は、昨夜遅かった文若に言い忘れていたことを思い出した。
「昨日、執務室に来たひとに、読んでいた詩を見られたんです。そうしたら、そのひとはとっても楽しそうに笑って、さらさらって簡に詩を書いて渡してくれたんです。凄いきれいな字でした。」
夫は、考え込む顔をした。
「どのような方だ」
「みなさんみたいな地味な色の服を着てましたが、素材は良さそうでした。帯も高そうだったし。えーと、なんだかきらきらした感じのひとでした。そのひとが笑うと、こっちが浮き浮きしてくるような。」
文若は前を向いて不機嫌そうに眉間に皺を刻んだ。
「まったく分からん。」
「ごめんなさい…」
「初めて会った方か」
「うーん、遠目で見てるかも知れないんですよね。だって、なんとなく見覚えがある気がするんです。あのきらきらした、ちょっと見とれるような笑顔」
夫は小さく咳払いをした。
「丞相のご子息のどなたかかもしれん」
「ええ!? 孟徳さんってあんな大きなお子さんいるんですか!?」
思わず大声を上げて立ち止まった花に、文若は眉間の皺を深くして振り返った。
「往来で騒ぐものではない」
「すみません」
また歩き出した夫に、小走りで追いつく。
「ああ、そうですよね。孟徳さんにはきれいな奥さんがたくさん居るって聞いたことがありますし」
「間違った評価ではないが、そう口にすることでもない」
「ごめんなさい…」
謝った途端に、小さくくしゃみが出た。文若が足を止め、不安そうにこちらを見る。
「やはり寒かったのではないのか。」
「大丈夫です。」
「いや、やはりお前が羽織る物を取りに戻る。」
花は慌てて彼の袖を掴んだ。「肌寒いからもう一枚着なさい」「いえ大丈夫です」という、家を出る前の押し問答を繰り返されてはかなわない。だいたい、彼は少し過保護なのだ。
「向こうに、薄物が置いてあったはずですから。遅れてしまいます」
不満そうに文若は押し黙り、頷いた。大きな袖の下で、花の手をそっと握る。
「やはり冷えている」
「じゃあ、着いたら、あったかいお茶を一緒に飲みましょう?」
文若は頷き、小さく笑った。それがとっても嬉しいなんて、わたしもずいぶん恋してるんだな、と花は頬を押さえた。
(2010.6.23)
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