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集中更新週間、二日目です。
ナニゲに文若さんのカテゴリがフタケタになって、紅い人に並んだ…
祭を待ってましたとおっしゃってくださる方もいて、本当に嬉しいです。ありがとうございます。
お礼は、期間が終わってから改めてさせていただきたいと思います。お待たせいたしますが、ご了承くださいませ。
静かな朝だ。文若は目を閉じて、その空気を楽しんだ。
弱い雨が降っているようだが、昨日まで晴天続きだったから埃が静まっていい。落ち着いた日になりそうだ。
「文若さん、起きてますか?」
くすくす笑いながら、花が耳元で囁く。彼は目を開けた。
「もちろん起きている」
「うふふ。」
花が、文若の髪をゆっくり梳く。
最初のうちこそ、力任せに梳いて彼に顔をしかめさせたり、かと思えばおそるおそるやりすぎて頭巾が解けそうになったりと試行錯誤していた。だが、婚儀を挙げてからはその動作も板に付いたものだ。
「文若さん、これくらいでいいですか」
「ああ」
そのやりとりが、何十年も連れ添った夫婦のもののような錯覚を起こし、文若はひとり赤面した。花が、側に立って並んで鏡を覗き込む。嬉しそうに笑う目が、鏡越しに合った。
「…なんだ」
「今日も格好いいです」
馬鹿なことを、と言いかけて彼は咳払いした。
「容姿で仕事をするわけではない」
「いいえ、大事です。だって、容姿はひとの内面がにじみ出るって、先生がよく言ってました。」
乱世に突然やってきてそれなりに経つのに、彼女がふと口にすることはいかにも幼い。だが、それだけに明快だ。
「…融通の利かない石頭か」
自嘲気味に言うと、軽く睨まれる。
「文若さんってば。」
文若はふと、花を横目で見上げた。
「ではお前はどうだろうな?」
花は少し考えるふうに目を天井にやったが、すぐ決まり悪そうに笑った。
「あは、あまり深く物を考えないというところでしょうか~」
文若はゆっくり立ち上がって、謹厳な表情を作って彼女を見下ろした。途端に彼女が、採点を待つ生徒のような表情を浮かべる。
「わたしの妻を軽く見ないで貰いたい。…なにしろ彼女は、ひと一人、この世に留め置くことに成功した女なのだからな。」
神妙に、だがこそばゆいような表情で花が頷く。
「…はい。」
「では、行こう。」
「あ、文若さん」
「なんだ?」
振り返れば、花は悪戯っぽい笑顔を浮かべ、唇の前に人差し指を立てた。
「わたしの旦那さまは、それが魅力なんですよ?」
「…覚えておく」
熱くなった顔を隠すべく急ぎ足で歩き出した文若に、小さな足音がついてきて、並んだ。
(2010.6.22)
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