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二次創作。はじめての方はat first はじめに をご一読ください。
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 玄徳さんと花ちゃんです。
 ぴろぅとぅく、なので、苦手な方はまわれみぎをお願いします。
 
 
 コメント、ありがとうございます。お返事、もうすこしお待ち頂ければ幸いです。
 
 
 
 

 
 
 
 目を開けると、広い背中が見えた。
 傷の多い背中が一瞬だけ横切った月の光に照らされ、見えた。そういえば今日は雲が早かった。たくましい腕がうす青の夜着を羽織り、帯を締め直している。そこまでぼんやりと見つめていた花は、振り返った玄徳に微笑まれてようやく、夢ではない、と分かった。
 「玄徳さん?」
 指が、花の頬を撫でた。
 「いま、水と…着るものを持ってくる」
 若干照れくさそうに言われ、花は顔を赤らめた。そうだ、いつも玄徳に抱かれたあとは躰に力が入らなくなってしまい、手間を掛けさせてしまうのだ。一度、頑張って褥から出ようとして力が入らず、傍らの衝立に縋った結果それを倒してしまい、あまりの物音に賊が侵入したかと衛兵に問いただされた。ばつの悪さに震える花に玄徳が口添えして事なきを得たが、翌日、非常ににこやかな孔明に窘められた。
 玄徳が水差しを手に戻ってきた。そのまま覆い被さってくる胸を両手で止めると、彼は怪訝そうに口に含んだ水を飲み込んだ。
 「どうした」
 「口移しは、だめです」
 「どうして」
 非常に残念そうに、真面目な顔で彼が問うので、花は掛布をかき集め胸元にたぐり上げて夫を見つめた。
 「だって玄徳さん、いつもなしくずしで…」
 「いつも、じゃないだろ?」
 にこりとした玄徳に、花は強くかぶりを振った。
 「三回に一回は、いつも、でいいと思います!」
 「厳しいな」
 困った顔の玄徳を見ると、いつも花の胸は痛む。彼はいつも忙しく、妻の腕に眠っていてくれることなど数えるほどしかない。だからふたりでいる時はできる限り、というかすべて望みを叶えたくなる。ただ、玄徳のねだりごとは睦言が多くて、翌朝、床を離れられない羽目になるのは本末転倒だと何度言っても、このひとは笑うばかりなのだ。
 玄徳は褥に座り花の頬を撫でた。
 「花が好きなんだ」
 さっきまで耳元で囁かれていた調子と同じに言われ、花の頭はくらくら回る。かたい、大きな手のひらが頬から首をゆっくりと撫でる。
 「どこもかしこも」
 「わ、わたしだって玄徳さん好きです」
 「じゃあ問題ない」
 「問題はあります」
 花はできる限りの厳しい顔を作って夫を見た。
 「わたしが起きられない朝は玄徳さんの機嫌がすごく良いから、その…子どもが、遅いんじゃないかって」
 「何?」
 急に真剣な眼差しをした玄徳に、花は視線を逸らした。頬を撫でていた手が、掛布を握りしめていた手に重ねられる。それでも、これから言うことの恥ずかしさに動悸が速くなる。
 どうして恥ずかしいのだろう。求められるのは嬉しくて、すべて彼に溶かしていたいくらいなのに。混乱する。
 「その…こういうこと、が頻繁な夫婦は、子どもを授かるのが遅い、って、その、侍女さんたちに言われて…玄徳さんの子どもはみんなが待ってるから気をつけてくださいって」
 突然、唇を重ねられて花は息を詰めた。縮み上がった肩を彼の手のひらが静かに撫でて躰ごと抱きしめられる。口づけは長かったが静かで、いつの間にか力を抜いて玄徳の唇が離れてもぼうっと彼を見つめていた花に、玄徳がくす、と笑った。
 「ともにいるのが嬉しいと全身で訴えてくれる女に応えないなど、俺の性ではない。だから、花が案じることはなにもない」
 花は瞬きした。その瞼に口づけ、また彼は笑う。花の大好きな、あの温かく大きな、そうしてどこか色気のある不敵さで笑う。
 「お前を愛することに、何を言わせるものか。…もう誰にも何も、言わせない」
 花は掛布を握りしめたままだった手を、ゆっくり玄徳に伸ばした。彼の背を抱きしめると、布が滑り落ちた胸が自然に寄り添う。
 自分の腕は彼の背に回すのもやっとだ。もっと温かくて大きい腕なら、このひとを思う存分抱きしめられるのに。もっと、もっと寄り添いたい。
 「大好き…」
 何を言ったらいいか分からなくなって、それでも告げたくて言うと、可笑しそうな息が耳元をくすぐった。
 「許可は貰えそうかな、奥方さま?」
 「いくらでも」
 うっとり囁けば、彼の躰はびくりと跳ねて、今度は奪うように口づけられた。
 
 
 
(2011.4.8)

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